国際事業に関するお役立ちブログ(七)

日本国の成長戦略に関する提案(5)

7.国際事業を成功させるためのリスキリング

1)リスキリング(Reskilling)の必要性

経済産業省は、「リスキリング(Reskilling)とは、新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得すること」と定義している。リスキリングは元々DX(デジタル・トランスフォーメーション)等への対応の為に言われ出した言葉であるが、これは我が国の国際事業活動分野にも必要である。以下、国際事業活動に必要なリスキリングの重要項目について言及してみる事にする。

2)国際経済学、貿易政策学、条約、法律及び慣習の理解

現在の国際取引は、実に5000年以上の歴史があって行われている。例えば、英米法国で現在でも使われているdeed を構成するsealについてのわが国で尤もらしく解説されている情報は、ハンコ(stump)と同じように扱っていて、そのような解説が大半を占めているが全くの誤報である。このような誤報は今流行のAI利用の結果で、雑菌が良菌を食い潰している結果なのである。
それどころか、現在、米国大統領は、圧倒的な国力と専門分野である不動産の取引(deal)の経験を背景に、既存の国際的な経済論、貿易政策論、条約論、法律論、慣習論等々を無視した政策を打ち出している。天才は、既存のものを破壊して、全く新規のものを生み出すと言われるが、関係者が満足する新規のものが創造できない限り、米国大統領の政策が破壊で終わると世界中で厄介なこととなる。よって、米国との関係の深い我が国は、常時、彼の行為に注意しなければならない。また、米国大統領の政策がどのように変化するのか、上院と下院の議員構成がどうなるのか、大統領の後任の有力政治家がいかなる政策を打ち出すのかを、注意深く見守る必要がある。

何はともあれ、我が国の為政者、企業、個人は、国際事業を推進するとすれば、国際経済学、貿易政策学、条約、法律、慣習等を正しく認識し、学習し、理解してこれを進めなければならない。これを怠れば、折角目指した国際事業を成功させることが不可能であろう。

3)国際事業を推進するための必要実務知識の取得

国際事業は、上述の国際経済学、貿易政策学、条約、法律、慣習等の学術的なものだけでなく、これらに裏打ちされた日々の「実務」を成功裏にこなすことが課題である。その「実務」は、一般的に企業内の先輩から引継ぎ的に教わることになるが、欠けた実務知識は、自己の経験で知るか、研修を受けるか、外部のコンサルタント等の専門家から習得することになる。特に国際事業(取引)においては、我が国及び関係国の諸手続き、契約書作成、取引相手の戦略や戦術の理解と対処、ステークホルダーへの気配りが肝心である。これについて、気を付けねばならないことは、かような実務知識について全面的に精通している人は極めて少ないので、講習会等で学習したり、自ら正しい教科書でスキルアップしたりする必要があることである。

4)国際取引契約の種類とその選択

日本国内の取引契約の種類は無数にあるが、国際取引契約書の種類はそれ以上に多くある。そもそも我が国では、契約書を証文と呼んで、極めて簡単な文書しか作成してこなかった。また、我が国では証文がなくとも、口頭契約の存在を証人が立証すれば、契約の存在が認められてきた歴史がある。よって、契約書の高度化が進まなかったといえる。これが現在でも続いている。しかし、今や、グローバル経済活動が重要になり、国内の狭いマーケットだけでは事業は成り立たなくなってきているので、企業は様々な取引乃至は契約を知らねばならない。企業は、かかる幾多の取引や契約の種類を知ってこそ、自社の商品を取引対象とし、それで高収益が得られるのである。

契約の種類とは無数である。ただ、それらの諸契約を一定のカテゴリーに大分類し、各カテゴリーに含まれる契約を更に種別に細分して理解することが重要である。最終的には、契約は1件毎に違うものであると心得た方が良いかも知れない。ただ、あまり細分化して考え過ぎると、取り付く島(参考となる契約)が分からなくなる。要するに、暗黒の世界を彷徨うことになってしまう。例えば、輸出入契約は売買契約であるが、取引対象品目によって契約内容に差がある。また、スポット(一回限りの)売買と長期継続的売買では内容が異なってくるし、仲介業者や代理・代行業者が存在する場合にも内容が変わる。そこで、類似のものを一把一絡げにして検討してみる事も必要なのである。

5)自社商品を最も高価に取引する(deal)方法を考える

一般に、企業は、その物品、知財、資材、資金、役務等々(商材)を他企業(官庁等もある)に販売したり、貸与したり、利用させたりするなどして、関係者間で価値を増大させて、増大した価値を分配することにより相互に利益を享受する。更に重要なことは、如何なる取引が高利益を生むかと言うことであり、その高利益が、取引当事者にできるだけ平等に分配されるかと言うことである。これを検討するのが先に述べた「ビジネス・モデルの構築」であるが、これは関係者間のコンセンサスを必要とする。それから先の「戦略の策定」と「戦術の策定」は各当事者の技量の課題である。多くの企業は単純な売買取引を志向するが、「ビジネス・モデルの構築」段階で、商材をあらゆる観点から検討し、より高収益が期待できる取引形態を造り上げるのが正しいビジネスであり、取引であると心得るべきであろう。

(つづく)

◆IBD情報のご利用メリット

IBDのウェブには、「取引戦略・実務データベース:Aデータベース(約5,000項目の国際取引と契約に関する解説文)」並びに「国際契約書データベース:Bデータベース(500種類の契約書式と約10,000の契約条項例;日本語、英語および中国語)」があります

日本企業にとって、国際ビジネスを輸出入ビジネス(売買)のみで推進するのではなく、他の取引形態を考えておかねばなりません。即ち、海外投資ビジネス、知的財産活用ビジネス、国際分業ビジネス等々を推進できるようにし、状況に適った高生産性ビジネスを目指す必要があります。IBDの事業が、国際事業を推進する皆様に参考となると確信しています。

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