世界の海援隊-バックナンバー-ビジネス英語シリーズ


「世界の海援隊」と題した、このIBDインフォメーションは、グローバルな目、柔軟な思考、先見性、交渉技術、行動などをもって 実践していった「坂本龍馬」を接点として、皆様に国際政治、経済や法律に関する情報や格言をご紹介するなど、幅広い分野の話題を皆様と語り合うためのIBDの機関誌です。

バックナンバー 投稿要項

ビジネス英語シリーズ 「知っている積もり」

実務英語の ポイントをわかりやすく押さえた本項は、英文の契約書などを読み、書く上でマスターしたい 基礎を毎月連載しています。

(講師:IBD研究員/北島武)

第1回(2001年4月所載):“知っている”vs “know”

日本語の「知る、知っている、知った」に相当する英語は、なんと言いますか、と聞かれれば、 ほとんどの方が”know”と答えるでしょう。果たして、そうでしょうか。今回は、日本語「知る」と英語”know”について、その対応状況を以下の例で見てみましょう。それでは、皆さんも一緒に、 各項目ごとに掲げた和文を英文にしてください。

(1) 「私たちは貴社が台湾の半導体の大手メーカーであることを知っています」に対応する英文は。

Aさんの回答:”We know that your company is one of the leading manufacturers of semiconductors in Taiwan.”

いかがでしょうか。これとは違った表現をされるネーティブ・スピーカーも居られるかもしれませんが、これは、正しい英語表現と言えます。

(2) 「私たちは最近、貴社が台湾の半導体の大手メーカーであることを知りました」に対応する英文訳は。

Aさんの回答:”We have recently known that your company is one of the leading semiconductor manufacturers in Taiwan.”

Aさんの回答を見ると、ちゃんと現在完了を使っているし、問題ないように思えます。しかし結論から言えば、これは正解ではないのです。ではどうしてか。正しくは何と言えばよいのか。

knowの第一義は、「知っている」ですが、この意味では状態動詞として使用されるのです。したがって、”knew”は、日本語の意味が「知っていた」という状態を表しますが、「知った」 という動作を表していないからです。英語では、このような動作としての「知る、知った」は、 別の表現を使って表現します。
動作を表す場合、以下のように”get to know”、または動作動詞”learn”を使って表現します。 例えば、上記の和文は、以下のように英訳するのが良いでしょう。

“We have recently got to know that your company is one of the leading semiconductor manufacturers in Taiwan.”
“We have recently learned that your company is one of the leading semiconductor manufacturers in Taiwan.”

(3) 状態動詞と動作動詞
英和辞書を見ると、ほとんどの動詞について状態動詞なのか動作動詞なのか、その区別が記述 されています。状態動詞と動作動詞の用法の大きな違いは、状態動詞は、通常進行形をつくり ません。
参考までに、”know”の用法でややこしい例を以下に挙げます。
1. 「彼はその報告が事実だということを知っていた」
○ He knew that the report was true.
× He was knowing that the report was true.

2. 「私は彼を、学生の頃から知っています」
× I have been knowing him since he was in junior high school.
○ I have known him since he was in junior high school.

3. 「両者の違いは分かっている」
× I can know the difference between those two.
○ I can tell the difference between those two.
(knowは助動詞canと一緒に用いられることはほとんどない)

4. 「私はニューヨークのあるパーティでホームズ氏と知り合いました」
× I knew Mr. Holmes at a party in New York.
○ I became acquainted with Mr. Holmes at a party in New York.
(「知る」が「知り合いになる」を意味する時は、get acquainted withが使われる)

5. 「貴社のことをインターネットを通じて知りました」
× I knew about your company via the Internet.
○ I have learned about your company via the Internet.

では、次回をご期待ください。

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第2回(2001年5月所載):「確認する」vs“confirm”

日本語の「確認する」は、いろいろな文脈でしかもいろいろな意味で使われている。したがって、英語に訳す場合には、それぞれの意味を汲んで訳し分けする必要がある。以下にその用法を見てみよう。

(1)「本件は、A社に当たって確認してください」の英訳
 Please confirm this matter to A Corporation.(誤)

 これは誤りである。ではどうしてconfirmがいけないのか。そんなときに便利な辞書が 「Collins英英辞典」のCD版「Cobuild on CD-ROM」である。同辞典で、”confirm”の項目を見てみると、以下のような説明がある。

第1義

If something confirms what you believe, suspect, or fear, it shows that what you believe, suspect, or fear is definitely true.
例文:My suspicions were confirmed by his absence.
「私の疑念は彼が来なかったので確認された」

第2義
If someone confirms that something has been stated or suggested, you say that it is true because you know about it.
例文:She asked me if it was my car and I confirmed that it was mine.
「彼女が、その車は私の車か、と聞いたので、私はそうだと確認した」

第3義
If you confirm an arrangement, appointment, etc., you say, usually in a letter or on the phone, that the suggested appointment or arrangement is now definite.
例文:I want to confirm my booking on this evening’s ferry.
「今晩のフェリーの予約を確認したいのですが」

 以上から明らかなように、confirmには、尋ねるという意味はなく、ビジネスレターでしばしば 使われるconfirmは、「念押しをする」という意味であることがわかる。そこで、上記の日本語に対応する英文は、「当たって確認する」を「尋ねる、調査する」と解釈して、checkを使い、以下のようにしなければならない。

 Please check this matter with A Corporation.(正)

(2)「昨日の会議の内容を以下のとおり確認します」の英訳
 I confirm the discussions made at the yesterday’s meeting as follows:

 この場合は、確かに「念押しする」意味なので、confirmが最適である。

(3)「CD-ROMがドライブに装填されているか確認の上、再度試してください」の英訳
 Please check that the CD is inserted on the drive and try again.(正)

 この場合、「確認」は、「調べる」を意味するので、checkの方がよい。

(4)「名称と機能で、すべての部品を確認しなさい」の英訳
 Identify all components by name and function.(正)

 この場合、「確認」は、「識別」を意味するので、identifyの方がよい。

(5)「タンク内に水がないことを確認しなさい」
 Confirm that there is no water in the tank.(正)

 この場合は、confirmをcheckに入れ替えても問題ない。したがって、

(6)「船積み予定を至急ご確認ください」の英訳
 Please urgently confirm the shipping schedule for our order.(正)

 この場合は、すでに何らかの形で知らされている情報を確認する意味なので、confirmが 最適である。

(7)「この旅程表を見て確認して下さい」の英訳
 Please check the itinerary to see if it fits you.(正)

(8)「シリンダーのリークを確認して下さい」の英訳
 Please check the cylinder for leakage.(正)

 以上のように、日本語の「確認」に相当する英語は、ざっと見ただけで、confirm, check, identifyな どがある。正確な英文を書くためには、用例を参照する習慣を身につけることが大切である。

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第3回(2001年6月所載):「検討する」vs “review”

前回のこの欄で取り上げた「確認する」と並んで「検討する」もよく分からない日本語の代表格 である。国会発言でよく政治家が使用する「よく検討します」は、否定的な発言と解釈しなければならない場合がほとんどである。「検討する」は、いつでも”review”を使えるのだろうか。 和英辞書で「検討」の項目を見ると、check/consider/examine/go over/investigate/study/ reviewなどが並んでいる。しかし、これらの単語がどのような文脈で使えるのか十分な説明がない。 そこで、前回言及した「Collins Cobuild英英辞典」でこの単語(動詞)の意味を確認してみよう。

「第1義」
If someone reviews a situation, method, or procedure, they examine it in order to decide whether to make any changes in it.

[Sample]: It is a simple matter to review the contract —
       By law, state pensions must be reviewed once a year.

[Synonym]: “reassess”

「第2議」
If you review a situation or series of events, you think about them or talk about them, often in order to understand them better.

[Example]: At 6:3- each morning, the partners meet to review the previous day

[Synonyms]: go over

上記から考えると、もともとの意味は、「見直す、再評価する」と「調べる、吟味する」の二つ の意味があることが分かる。それでは、ビジネス現場では、どのように使うべきか、以下で具体 的に検討してみよう。

(1)「本件は検討して、後刻回答申し上げます」の英訳
I will review this matter and let you know the results later.

「文書/計画/要請/提案/状況を検討する」の意味では、review the document/plan/request/ proposal/situationのように、使用することができる最も一般的なビジネス表現である。
しかし、上記の場合には、意味とニュアンスが少しずつ異なるが、consider/examine/go over/ investigate/study/look into なども文脈によっては使えることを理解しよう。

(2)「同じ問題の再発を避けるため、その機械の故障の原因は徹底的に検討すべきである」 の英訳
The cause of the machine trouble should be investigated thoroughly to avoid recurrence of the same problem.

この場合、「検討」は、「調査、究明」を意味するので、ここでは、reviewも使えるが、組織的 に行われる調査、大がかりな調査を意味するinvestigateがよい。これに対し、check/look into も使えるが、意味が軽く、日本語の「点検」を意味する。

(3)「貴社の提案書につきましては、今日の営業会議で検討後、当社の対応を連絡します」 の英訳
I will let you know about our response to your proposal after we discuss it at our sales meeting this after noon.

この場合は、「検討」は、討議と解釈すれば、reviewをdiscussに代替してもよい。

(4)「早速、状況を検討してご連絡申し上げます」(顧客からクレームの通知を受けて) の英訳
I will inform you our solution to this problem after we look into the case.

上記の文脈では、reviewも使える。

(5)「6月に貴地で開催される次回の共同調整会議には、山田太郎部長を派遣することを 検討中です」の英訳
We are now considering sending Mr. Taro Yamada, the head of the sales department, to the next joint coordination meeting scheduled for June in your country.

この場合、「検討」は、「…をするかどうか思案している」という意味なので、上記の ように{consider + 動名詞}を使うが、review/study/checkなどは、使えない。

(6)「A社は、売上の拡大策を検討中である」の英訳
A company is exploring ways to boost its sales.

この場合は、「検討」は、「模索する、探索する」の意味であるから、explore/mull overなどが相応しい。

以上、曖昧な日本語「検討」の適訳を検討したが、適語を使用するためには、日本語の意味 を正確に理解することが肝要であることが分かる。次に英語のそれぞれの語の持つ「語感」 を日頃から磨いておくことが必要である。

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第4回(2001年7月所載):「何々することができる」vs “can/be able to”

「ABC社は、顧客のあらゆる要望に応えることができます」または「当社の製品は、室温が 摂氏50度を超えても平常通り稼動することができる」などの英語表現はどうしたらよいので しょうか。今回は、can/be able toを中心に能力・可能の表現について、考えてみましょう。

(1)「貴社注文は、今月中に船済みすることができます」の英語表現
a) We can ship your order by the end of this month.
b) We are able to ship your order by the end of this month.

 上記の表現は、どちらも文法上問題がない。しかし、このような現在時制では、canを使う 方が一般的です。(参考までに、be able toは、能力を強調した表現です)。結論として、 「現在の能力・可能」を表す英語表現としては、canを使えば、問題がないのです。

(2)「明日午前9時に、ホテルまでお迎えに行くことができます」の英語表現
a) I can pick you up at your hotel at nine in the morning.
b) I will be able to pick you up at your hotel at nine in the morning.

 上記の2例a), b)では、どちらが良いでしょうか。これは、a), b)両方ともが正解です。 学校文法では、「canは未来形がないので、代わりにwill be able toを使うように」と 指導を受けました。しかし、b)のように「確定的な未来を示す副詞語句があるときは」、 未来の意味を表す場合でも、canが普通に使われています。ビジネスでは、時を確定せずに、 ただ漠然とした未来を話すことはありません。

(3)「若いときは、私は英語を話すことができました」
a) When I was young, I could speak English.
b) When I was young, I was able to speak English.

 上記のように一般的に能力だけを言う場合には、どちらも使われます。

 しかし、「能力+単一動作の実行」つまり、その能力があって現実に何か1つの動作・ 行為をしたというときには、was/were able toを使うようにと、文法書には書いてあります。

「予定通り製品を顧客に納入することができました」の英語表現
c) We were able to deliver the products to our customer on schedule. d) We could deliver the products to our customer on schedule.

 上記の日本文では、「能力+単一動作の実行」と解釈されるので、c) (be able to)が正解です。 一方、d) (could)は、「引渡せるであろう」と言う意味にとられるのです。つまり、仮定法過去と して、受け取られるのです。

 結論として、「何々することができた」のような過去の「能力+単一動作の実行」を表現する 場合は、was/were able toを使うべきです。

 それでは、ここで何故couldが使えないのか、その理由を考えてみましょう。
canも含めてwill/shall/may/mustなどの助動詞全ての機能について言えることですが、本来 助動詞は、通常動詞のように現実の行為、動作を表すのではなく、あくまでも話者の考え、 希望、推量、などを付加するのが役目です。したがって、”could deliver”は、納入する能力・ 可能があるが、実際に動作・行為ができたことを述べてはいないのです。一方、”were able to deliver”は、能力・可能があり、現実にできたことを表現しているのです。

(4)「貴社の注文の品物は、在庫不足のため8月中には出荷することが出来ませんでした」の英語表現
a) We could not ship your order by the end of August due to the shortage of stock.
b) We were not able to ship your order by the end of August due to the shortage of stock.

上記のa) (could not) b) とb) (were not able to)では、どちらが適切な表現でしょう か。この場合には、could not/be not able toは、互換性があるのです。困ったものですね、 だから英語は、嫌いだと言われる方もおられるかと思いますが。これは私のせいではありません から、ご容赦ください。

(5)「この新技術の導入によって、我々は製品の品質を改善することができた」の英語表現
By introducing this new technology, we could improve the product quality.

 これまでに説明したことから、お分かりのように、上記の英文は、「この新技術を導入すれば、 我々は製品の質を改善することができるであろう」の意味となります。原文の日本語から 異なってしまいます。では、このような場合は、どうすればよいのでしょうか。 勿論、were able to としてもよいでしょう。
 または、By introducing this new technology, we succeeded in improving the product quality.とするか、あるいは単に、By introducing this new technology, we improved the product quality.とするか、「何とかすることができた」と解釈して、manage toを使って By introducing this new technology, we managed to improve the product quality. とした方が、あれこれ悩まずに済みます。

(6)「この材料は、2500ボルトまで耐えることができます」
a) This type of material will withstand 2,500 volts.
b) This type of material can withstand 2,500 volts.

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第5回(2001年8月所載):~に関して」「~について」はどう訳すか

1. about…

 多くの場合、口語体の表現としては、aboutで用がすむと思ってよいです。
例文1. About our services contract, please call us at 725-2215.
    「当社のサービス契約については、725-2215番までお電話ください」

例文2. I certainly appreciate your writing me about the fact that our rival plans to invest in China.
    「当社のライバルが中国に投資する計画を持っている事実についてお手紙を頂き、     まことに有り難うございます」

上記のように文中でも文頭でも用いることができます。なお同じような意味合いですが、 少し専門的な響きをもつonも同じように使うことができます。

2. concerning…, regarding…

例文1. Would it be convenient to talk to any of your staff concerning the prospect of business between your and our firms?
    「貴社と当社との取引の可能性に関して貴社の幹部のどなたかとお話したいので    すが、ご都合はいかがでしょうか」

例文2. We are particularly interested in your information regarding the new synthetic fiber called Tevlon for fish netting.
    「当社は漁網用のテブロンという新しい合成繊維に関する貴社からの情報にこと     に関心をもっています」

上記のように使用されていますが、多少格式張った表現といえます。aboutに代えて も問題ないと思われます。また、文頭での使用は、あまり好まれていないようです。

3. with (in) regard to…, with (in) respect to …, as regards…, with (in) reference to…
例文1. With reference to your letter No. 532 informing us about short delivery in your order, I have checked with our shipping department to find facts.
    「ご注文の品の納入不足に付いて連絡をいただきました貴信532号に関して、    運輸部に事実を照会しました」

上記のように文頭でもよく使われていますが、このような堅苦しく、長い語句は止めて、 直接問題を述べるようにしたほうが、ビジネス文には、相応しいと思われます。 したがって、上記の場合であれば、以下のように書いた方が直接的でよいのではない でしょうか。

Thank your for your letter No.532 informing us about short delivery in your order. I have checked with our shipping department.

したがって、文頭、文中でも通信文では、使用しない方がよいでしょう。もちろん堅い 表現好みの契約書では、このような語句が大手を振って使用されています。

4. (As) for …

例文1. (As) for our credit standing, please refer to the Bank of Tokyo-Mitsubishi, Tokyo.
    「当社の信用状態に関しては、東京三菱銀行にご照会ください」
例文2. For Canadian owners who prefer a French language manual, please contact the following address.
    「フランス語のマニュアルをお望みのカナダ人のオーナーは、下記にご覧絡ください」
    (GMのポンティアック車の英文マニュアルの1ページ目にある通知)

上記のように文頭で用いられます。特に話題を変えて、新しいパラグラフを書き起こす ような場合、先頭のセンテンスの文頭に使うと効果的です。

5. まとめ

 日本語の文書では、テーマを導入するために、「~に関して」が頻繁に使用されている ため、私たちは英語を書いているときも、同じように使いたくなります。しかし、ネイ ティブの書いた文書、特にビジネス文書では、日本文の文頭で使われているような「~ に関して」に対応する導入語句は、あまり見られません。これは、特に導入語句がなく ても、正しく理解できるような文の構造に由来するのでしょう。
 結論として、ビジネス文では、簡略、明快を旨としますので、上記3のような重い表現 は避けて、aboutなどの軽い語を多用されることを奨めます。

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第6回(2001年9月所載):「~して、~する」 vs ”動詞 and 動詞”

 「マネージャーは、計画を役員会に提出して、承認を求めた」のような同一の主語に 述語が二つ以上続く表現について、少し工夫を凝らして文にめり張りを付けてみよう。

(1) 「マネージャーは、計画を取締役会に提出して、承認を求めた」の英語表現

 The manager submitted his plan to the Board of Directors and requested the Board to approve the plan.

 取りあえず思いつくままに書くとすれば、上記のような英語表現となりましょうか。 しかし、この文は、意味は伝わるでしょうが、一文にBoardが二回も出てきてなんとなく 稚拙な文ではないでしょうか。では、どのように改良すればよいのでしょうか。

 このような場合に有効な表現方法としては、(1)分子構文、(2)不定詞構文、(3)前置詞句が 考えられます。たとえば、前置詞を使って以下のように改良してはどうでしょうか。

(a) The manager submitted his plan to the Board of Directors asking for its approval.
(b) The manager submitted his plan to the Board of Directors to ask for its approval.
(c) The manager submitted his plan to the Board of Directors for approval.

 いずれの表現も、それぞれ多少ニュアンスが異なるかも知れませんが、こちらの意向を 正確に伝えると言うビジネス英語の第一目的を満たしています。上記の内(c)が特に簡潔で 効率的表現と言えます。

(2) 「当社は、日本におけるデジタル式ヘルス・スケールの大手メーカーです。資本金は、 8千万円、従業員50人、年間生産量は10万台です」の英語表現

 We are a leading manufacturer of digital health scales in Japan, and  the authorized capital is 80,000,000, the number of the skilled employees  is some fifty, and the yearly production is 100,000 units (the 2001 fiscal  period).

 上記の場合は、主語が異なる文が並んでいますが、締まりのない英文としか言いようがない ですね。そこで、前置詞withを使用して、以下のように改良する。

 We are a leading manufacturer of digital health scales in Japan, with  the authorized capital of 80,000,000, some fifty skilled employees,  and yearly production of 100,000 units (the 20001 fiscal period).

 上記のようにwithを使って「文」から「句」に変換することによって、簡潔な文に到達する ことができる。

(3) 「彼は、ハワイへ向けて出発し、ワシントンからサンフランシスコまでは汽車を利用し、 そこからホノルルまでは汽船を利用した」の英語表現

 He left for Hawaii and went by train from Washington to San Francisco and  took a steamship to Honolulu.

 日本語の構造に忠実に表現してみた結果、上記のような表現を思いついた。意味は判る ので、会話表現としては良いでしょうが、小学生の作文のような文です。そこで、表現に 変化を与えるために、以下のように分詞構文を使ってみてはどうでしょうか。このような めり張りがない表現は、やはり稚拙な感じがする。

 He left for Hawaii, going by train from Washington to San Francisco, and  then taking a steamship to Honolulu.

 上記のように分詞構文を使うことによって、初めのandが二つも出てくる並列型表現から、 「ハワイに行った」ことに重点を置き、他の二つの行動を補足説明として扱っためり張り 表現となります。特に”and then taking”として、”and”の後に”then”を入れて、時間的 経過を表現していることに留意してください。

(4) 「ABC社は、日本の拠点を使って激しい競争の中を新5550型パソコンの販売を推進している」

 ABC Corporation is using its foothold in Japan and pushing sales of its new 5550  personal computer despite cutthroat competition.

 上記のような表現でもこちらの伝えたい内容は、伝えることができるでしょう。しかし、 一工夫して「推進するために、拠点を使っている」と解釈して、以下のように改良しては、 どうでしょうか。はるかに英語らしい表現になります。

 ABC Corporation is using its foothold in Japan to push sales of its new 5550  personal computer despite cutthroat competition.

(5) 「ABC社は、1945年に創立され、ポンプの設計、製作をしている」

 ABC Inc. was founded in 1945, and designs and manufacture pumps.

 上記の表現は、「創設された」過去の事象と「設計、製作」現在の事象が並列関係にあり、 めり張りがありません。過去のことは重要でなく、現在の活動が重要ですから、現在に 重点を置いた表現にすべきです。そこで、下記のように分詞構文を使って改良しては、 どうでしょうか。

 ABC Inc., founded in 1945, designs and manufactures pumps.

 このように分詞構文は、簡潔表現には有効な手段です。

(6) 「大阪のJETROから貴社が農業機械にご関心をお持ちであると聞きましたので、貴社と 取引をいたしたく本状を書いています」の英語表現

 We heard from the JETRO Osaka that you are interested in Farm Machinery,  and we are writing to you with a keen desire to do business with you.

 上記は、「ジェトロから聞いた」ことは重要ではなく、重要なのは、「本状を書いています」 の第2文である。そこで、分詞構文を使って以下のように改良する。

 Having heard from the JETRO Osaka that you are interested in Farm Machinery,  we are writing to you with a keen desire to do business with you.

 上記の改良文の方が、英語らしい表現で簡潔ですね。

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第7回(2001年10月所載):「何々するつもり」 vs ”will do / be goingo to do”

(3)「彼女は、来月仕事を辞めるつもりをしている」の英語表現

 a) She will leave her job next month.
 b) She is going to leave her job next month.

上記に英文は、両方ともに文法的には全く問題がありませんが、厳密には意味が 異なります。

a)「(私は)彼女が来月仕事を辞めると思う」(推量)
この場合は、話者が、彼女が来月仕事を辞めることを推量していることを意味 しています。上記(1)で説明したように、willは、主語が一人称の場合に限 って、意図を表しますが、今回の例は三人称ですから、意図を意味しないので す。推量を意味するのです。willは、話者の立場から見て、確信がある場合の 推測を表現するものなのです。そのために、確信の度合いを高める場合には、 probably, likely, certainly, inevitablyなどがしばしば一緒に用いられるのです。 また、確信がない場合には、willに代えて、mayなどを使うことは、ご存じの通 りです。

b)「彼女は来月仕事を辞めるつもりをしている」(意図+計画)
 この場合は、彼女が仕事を辞める決心をして、その準備をしていることを話者 が知っていることを意味します。

結論として、日本文に対応する英語表現としては、a) b)の両文が使用できるが、 状況によって使い分ける必要があることになります。

なおwillは、主語が一人称に限って、意図を表すと言いましたが、以下のような 二人称、三人称で意図を表す用法もありますので、留意してください。

 否定の場合(won’tは、拒絶を表す)

 She won’t leave her job.「彼女はどうしても辞職しようとしません」
 The door won’t open.「このドアはどうしても開かない」

(4)「ご注文の品は、今月中に船積みされる予定です」の英語表現

 a) Your order will be shipped by the end of this month.
 b) Your order is going to be shipped by the end of this month.

今度は、主語が三人称です。結論から言いますと、a)、b)の両方ともに正しい英文 です。しかし、意味に以下のような違いがあるのです。

a)は、「船積みが今月中に行われるでしょう」という意味になります。この場合 のwillは、単純未来の用法で「推量」を意味すると理解してください。

b)は、「船積みの手配が整っており、今月中に船積みされる予定になっている」 と言う意味です。すなわち、be going toは、「意図+計画」を意味しています。 したがって、a)よりもb)の方が確定的な表現と言えます。

以上の基準を基に判断すると、顧客に対してメールやファックスで船積予定を知 らせる場合、荷物の船積みの手配が進んでいるような場合には、b)のような表現 を使った方が安心してもらえるでしょう。

 以上では、willとbe going toを中心に未来時制を考えてみました。be going toは、 用法が限られているので理解し易いですが、willは、上記のような意図や推量ばかり でなく、他の用法もあります。随時文法書を参照され、理解を深めて頂きたいものです。

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第8回(2001年11月所載):“遅れる(遅くなる) vs be late / delay

今回は「会議に遅れた」「船積みが遅れた」などの、「遅れる」に対応する英語表現にこ だわってみたいと思います。

(1)「私は、今朝仕事に遅れた」の英語表現

 a) I delayed for work this morning.
 b) I was delayed for work this morning.
 c) I was late for work this morning.

 a) delayは、自動詞として使われていますが、このような用法は、辞書にもありま すが、あまり一般的ではないようです。自動詞delayの基本的意味は、「ぐずぐず する」「手間取る」です。したがって、このような文脈では、ぴったりしないの です。念のため、電子英英辞書Cobuild CDを検索しましたが、delay for work/appointmentなどの用例は、皆無でした。ただし、Don’t delay.「ぐずぐずす るな」の用法は、ありましたが。delayは、基本的には、他動詞として使われるの が、主流のようです。

 b) delayが、他動詞として使われています。語法上は、問題ないと思われます。delay は、他動詞としての用法が基本ですから、人間が主語になる場合は、受け身にな ります。

 c) 恐らく多くの方が、be late forの後にwork, appointment, train, schoolなどを伴 う用法については、このエッセイを読まれる方は精通されていると思いますが、 まったく問題がない正しい文です。

結論:b), c)が適切な表現です。

(2)「今日は客先との約束に一時間おくれた」の英語表現

 a) I was delayed one hour for my appointment with a customer.
 b) I was late one hour for my appointment with a customer today.
 c) I was one hour late for my appointment with a customer today.

 a), b) 今度は、「一時間だけ」と言う修飾語が付く場合ですが、a), b), いずれの 文も全く問題が無いと言えます。one hourの前にfor/byなどは、不要です。
 c) 全く問題が無い表現です。

 結論:a), b), c) いずれも使用可。

(3)「9月分の船積みが遅れました」の英語表現

 a) The September shipment has been delayed.
 b) We have delayed the September shipment.
 c) We have delayed in shipping the September lot.
 d) We have been late (in) shipping the September lot.
 e) There has been a delay in shipping the September lot.

 a)は、何らかの理由で、船積みが遅れたたことを意味します。もしその期間、理由 を付加したければ、以下のようにすればよいと思います。

 The September shipment has been delayed one week by bad weather.
「天候が悪かったので、船積みが遅れた」

 b)は、delayが他動詞として使われた場合、第一義は、「延期する」、第二義が、 (悪天候、事故などが)「遅らせる」の意味を表します。したがって、話者が意 図的に遅らせた(延期した)場合には、このような表現でもよいでしょうが、た とえば船腹不足とか、悪天候とかが原因であれば、weを主語とすることは避けた いものです。現に、ビジネス文を見ますと、このような遅延を表す場合、物(行 動)を主語に据えた受動態表現がほとんどです。ここで、他動詞delayの基本用法 を整理しますと、以下のようになります。

 Bad weather delayed the shipment.
 The shipment was delayed by bad weather.
 We delayed the shipment because of bad weather.

 c)は、語法上は問題ないが、weが主語となっているので、避けたい表現です。
 d)は、正しい英文です。実際にしばしば見かける文です。
 e)は、語法上全く問題がない文で、weが主語として使われていない点から、使用 を奨められる表現です。

結論:a), e)を奨めます。

(4)「お手紙の返事が遅れ申し訳ありません」

 a) I am sorry that I have delayed to answer your last letter.
 b) I am sorry that I have delayed answering your last letter.
 c) I am sorry for having delayed answering your letter.
 d) I am sorry for/about our delay to answer your last letter.
 e) I am sorry for/about our delay in answering your last letter.
 f) I am sorry we have been late in answering your last letter.

 a) 語法が正しくありません。他動詞delayは、不定詞を従えないからです。
 b), c) 語法上問題がなく、使える表現です。他動詞delayは、動名詞を従えます。
 d) 語法が正しくありません。名詞delayは、不定詞を従えません。
 e) 語法上問題がなく、使える表現です。名詞delayの後に来る前置詞は、遅れの 対象が来る場合には、in /ofをとります。たとえば、delay in (of) shipment, delay in (of) paymentのように使います。
 f) これも語法上全く問題が無い表現ですので、使用することができます。

結論:b), c), e), f)を使用することを奨めます。

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第9回(2001年12月所載):“~する(した)場合”vs “in case”

私たち日本人が、「場合」と言う日本語に遭遇したときに、真っ先に思い浮かべる英語が caseではないでしょうか。しかし、いつもcaseを基本とした、in case , in case ofを 使えばよいのでしょうか。「ビジネスの現場では、「何々する(した)場合には…」また は「何々の場合には…」などのように、「場合」と言う言葉が頻繁に使用されます。そこ で今回は、「場合」をどのように英語で表現すれば、もっとも適切な表現になるのか、 考察してみたいと思います。

英語表現を考える前に、日本語の持つ意味を確認するために、日本語の辞典を検索して 見ましょう。三省堂 『ハイブリッド新辞林』では、以下の3つの意味を挙げています。

(1) そのときの事情や状況、局面。「時と~による」
(2) ある状況になったとき。「緊急の~」
(3) …に関して言えば。「彼の~は例外である」

大雑把に言って、日本語「場合」には、三通りの意味があるようです。(1)は、接続詞 「とき」に相当する「状況」を、(2)「条件(もし…ならば)」(仮定だけでなく、広く条件 を表す)、および (3)「事例」をそれぞれ意味すると理解できます。このような理解を前提 に、ビジネス現場で使える英語表現を以下で考えて見ましょう。

(1)「会議に遅れる場合には、お電話をください」の英語表現

 a. Please call me when you are late for the meeting.
 b. Please call me if you are late for the meeting.
 c. Please call me in case you are late for the meeting.
 d. In case of your delay for the meeting, please call me.
 e. In the case of your delay for the meeting, please call me.
 f. In the event of your delay for the meeting, please call me.

上記の英文の中でもっとも文脈に相応しいと思われる表現は、a. when、 b. if、 c.in caseの3例です。この日本語の例文は、「状況」とも「条件」とも考えられま す。したがって、話す人、書く人が「状況」を意識すれば、whenを使い、「条件」 を意識すれば、if (in case)を使います。in caseは、ifに比べて口語調ですが、 交換可能と考えてください。一方、d. in case of、 e. in the case of、 f. in the event ofは、いずれも文法的には、問題ありませんが、このような話し 言葉の文脈では、格式ばった、大げさな表現と言えます。

(注) in caseは、米国では、ifと同じ意味で使われていますが、英国では、この ような使い方は、正用法となっていないことにご注意下さい。英国では、in caseは、 通常文末に置かれ、「するといけないから、~の場合に備えて」の意味でしか使われて いません。

例:Take an umbrella with you in case it rains.
「雨が降るといけないから、傘を持って行きなさい」

(2)「船積みが契約条件より一ヶ月以上遅れた場合には、契約条件に従ってペナルティ を請求します」の英語表現

 a. When you delay the shipment more than one month beyond the contractual shipment date, we will charge you a penalty in accordance with the terms and conditions of the contract.
 b. If you delay the shipment more than month beyond the contractual shipment date, ~.
 c. In case you delay the shipment more than one month beyond the contractual shipment date, ~.
 d. In case of delayed shipment more than one month beyond the contractual shipment date, ~.
 e. In the case of delayed more than one month beyond the contractual shipment date, ~.
 f. In the event that you delay in shipment more than one month beyond the contractual shipment date, ~.

上記の英文すべてが、文法的には問題がないのですが、日常のコミュニケーショ ンでは、e,fなどよりも、a, b, c, dの簡潔表現を用いることを奨めます。残る 問題は、whenとif (in case)のどちらを選択すべきかということです。船積みの 遅れは、望ましくない条件と考えれば、ifを選択した方が良いかも知れません。 しかし、実際には、このような文脈でwhenも使われています。

(3)「詳細情報またはご質問がある場合には、ご遠慮なくご連絡ください」の英語表現

 a. If you should require any further information or clarifications, please do not hesitate to contact us.
 b. Should you require any further information or clarifications, please do not hesitate to contact us.
 (ifが省略されて、倒置文となっている。文語調)
 c. For any further information or clarifications, please do not hesitate to contact us.

これは、手紙またはメールの最後に使われる決まり文句です。学校では、“if should”を「万一、何々(誰々)が何々で(すれば)有れば」を意味する仮定法 の一種として、教わりましたが、この場合も、「質問はないと思うが、もしあれ ば」というニュアンスが含まれていると解釈できます。このような場合には、 whenではなく、ifを使います。また、例文c.のようにforを用いる選択も良いと思います。 日本語からの発想では、なかなか思いつかない表現ですが、「場合」を「~に関しては」と 解釈すると、ぴったり収まる表現です。類似表現としては、次のような使い方もあります。

例:For our credit standing, please refer to the Sanwa Bank.
「当社の信用状態に関しては、三和銀行にご照会ください」

(4)「エンジンが、上記手順によっても始動しない場合には、以下の手順で行ってくだ さい」(マニュアル)の英語表現

 When the engine is hard to start by the above procedure, conduct the following procedure.
このような場合は、whenが使われます。特に故障などの悪い場合を想定している 状況ではないからです。もちろん、これが故障、事故、トラブルを想定した場合 には、ifが使われます。マニュアルなどでは、大げさで格式張った表現よりも、 簡潔表現である、when; if (in case)が多用されます。

(5)「新型モデルでの場合は、旧型よりも2倍のスピードが得られます」の英語表現

 With the new model, you can get a speed double that of the previous model.
この例文の「場合」は、状況や条件ではなく、具体的な事例について言及してい るわけです。このような場合には、with、 in、 for などの前置詞を使って表現 するのが最も簡潔であると言えます。これらは、それぞれ前置詞が持っている意 味によって、使い分けられます。

「彼の失敗の場合は、予防措置が十分になされていなかったからだ」
 In the case of his failure, proper precautions have not been taken.

「日本に住んでいるお客様の場合は、下記の住所に連絡をください」(事例)の 英語表現
 For customers who live in Japan, please contact the following address.

「共通データベースの場合、アクセス情報が顧客ごとに保存されている」
 In the common database, access profiles are stored per customer.

「この飛行機の場合、安全航行のために電子位置制御装置が備え付けられている」
 On this airplane, an electronic positioning control system is equipped to secure safety flight.

(6)「本契約の締結日以後に、もし売り手の履行費用が運賃、税金、政府徴収金、 または海上保険料で増加した場合には、買い手は当該の費用の増加または所得の損 失を補償する」(条件)の英語表現

 If Seller’s costs of performance are increased after the date of the contract by reason of freight rates, taxes or other governmental charges, and insurance rates, Buyer shall reimburse Seller for such increased costs or loss of income.

これは、売買契約書から引用した文です。契約書では、このように悪い事態また は滅多に起こらない事態を想定した場合には、whenよりも、if が使われます。 または、次の例のように、ifに代わって、in the event ofのような格式張った 表現が好まれます。

(7)「天災、政府の命令もしくは制限、戦争もしくは戦争状態、革命、ストライキ、 または売り手が制御できない事件が発生した場合には、売り手は、これらによって 直接的または間接的に引き起こされた引き渡し不能、または本契約の履行の遅れ に関しては、責任を負わないものとする」の英語表現

 In the event of Act of God, government orders or restraints, war or warlike conditions, revolutions, strikes, or of any other occurrence beyond Seller’s control, Seller shall not be liable for non-delivery or delay in performance of the contract caused directly or indirectly thereby.

この例文は、契約書の不可抗力条項から引用しました。契約書では、if, whenも 使われますが、特に不可抗力のような滅多に起こらない事態を強調する意味合い から、このような通常あまり使わない表現が好まれているようです。

以上にて、「場合」の英語表現の基本を見てきました。もちろん、これですべてをカバー している訳ではありませんので、皆さんが自ら勉強されることをお奨めします。