世界の海援隊–2018年5月

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2018年5月2日更新

【提言】

「契約交渉実例と、外国大企業の契約書DB」

日本の食品メーカー(以下「A社」という)が、米国の同業企業(以下「B社」という)に、ある化学物質の特許技術ライセンスをすることになった。A社は、従業員数が1,000人程度、年商額300億円程度で、B社のそれらは100,000人程度と3兆円であったので、B社はA社の100倍の規模の会社であった。A社としては、創立以来の大型の商談で、頭金として50億円程度、ランニング・ロイヤルティは、当該化学物質を使用したB社の食品の正味販売高の3%ということで、話が進められた。私もA社の顧問として協議に参加した。私としては、この商談においてA社を守り抜くため、取引条件をA社主導で進めることにした。そこで、先ず、B社が目論むグローバル・ビジネス展開の説明書の提出を求め、幾つかの疑問点については、次々と質問を投げかけて回答を得た。その間、A社側のアイデアも提示した。その上で、近い将来に締結されるライセンス契約書に関する“Heads of Agreement”(合意の骨子)を作成し、B社に送付した。これについても、かなりの遣り取りがあって、纏め上げることができた。所謂、A社ペースで商談が進んだ。

“Heads of Agreement”は、会合しないでメールで進められ、両者が署名したものをDHLで送付しあって、無事に調印した。そこで、ライセンス契約書の草案に入った。重要事項は、“Heads of Agreement”で合意されていたが、ライセンス契約書には、詳細条件が記載されるので、この草案はかなりの作業量であった。私としては、A社と相談しながらの作業であったが、大体私の提案通りの内容で構成した。A4版で、約40頁のボリュウムであった。このDRAFTについては、A社の取締役会で承認を得て、A社の担当取締役がB社の担当役員に引渡した。すると、翌日、早くもB社よりメールが入り、ライセンス契約書の内容について打ち合わせをしたいので、時間と場所を決めたいと言ってきた。B社の交渉団は、総勢9人になるとのことであった。流石に社長は含まれていなかったが、ライセンス担当役員、営業担当役員、財務担当役員、法務担当役員(弁護士)、その他幹部社員が揃っていた。しかも、メールには、3日間の日本における協議で、イセンス契約書の内容を最終決定したいと述べられていた。

これに対して、A社側で最も心配したのは私で、A社の社長、取締役(顧問弁護士を含む)、幹部社員達は、B社がA社のライセンス契約書案を丸呑みしてくれたと大喜びで、イセンス契約書の内容よりも、成約パーティをどうすればよいかなどが話し合われていた。イセンス契約書の内容については、ライセンス料は既に“Heads of Agreement”で合意しているので、他の条件は私に「お任せしますので、宜しくお願いします。」と言うばかりであった。というわけで、私に重大な責任が降りかかってきたが、顧問を仰せつかっている手前、私は逃げられない。

その日から、40頁のライセンス契約書の原案を何度も何度も読み直し、条文ごとに、この点についてB社が○○○○○○○○と主張してきたら、どう返答しようかと考え続けた。それに合わせて、対応のための契約書データも揃えた。その作業に何日間も費やした。B社は、3日間の協議で合意に至ると考えているようなので、こちらも周到な準備が必要であった。流石にA社の担当部長が心配して、私の作業につきあってくれた。

B社のメール受領後、10日でB社の交渉団が来日した。交渉場所は、東京都内のホテルの部屋とした。A社としては、数合わせもあって、幹部9人が交渉に臨み、通訳2人を同席させた。双方が、左右の2列に向き合って並び、それに加えて、A社用とB社用の通訳を各1人を配置した。A社の交渉窓口としては担当部長で、その左に私が座り、右には法務担当取締役(弁護士)が着席した。B社側は、ライセンス担当役員が真ん中に座り、左に法務担当役員、右に営業担当役員が座った。

“Heads of Agreement”で重要点は合意しているので、また、それに沿ってライセンス契約書のDRAFTを準備していたので、協議は比較的スムーズに行われた。とは言っても、B社からの各条文毎の要望事項は多く、その都度、A社の担当部長と私が対応を協議し、回答し、合意を進めた。

2日目の3時頃から、「保証(Warranty)」条項と「補償(Indemnification)」条項の交渉に入った。B社は「保証(Warranty)」について、①化学物質自体の規格と科学的効用、及び②化学物質を使用して出来上がる製品の品質保証を求めてきた。A社としては、特許の明細書に記載されている範囲で①の保証に合意した。ただ、②についての品質保証は、B社側の手に係るものであるということで、拒否し、一応B社の了承を得た。ただ、条文の最終案は翌日に持ち越すこととした。

問題は、「補償(Indemnification)」条項であった。これは、製造物責任(PL)を含むもので、ひとたびPL事故が発生すると、莫大な損害賠償責任がA社に生じかねない。そこで、A社の原案では、PL事故等に関する補償は一切しないことにしていた。しかし、B社は、PL事故等の原因がライセンス対象の化学物質と特定された場合、A社が全面的に責任を負うように求めてきた。A社側としては、上記②と同様に、当該化学物質を何にどのように使うのかは、B社のお裁量範囲の問題であるので、かかる補償は一切行えないと拒否した。この遣り取りに、2時間ほど費やしたが、結論は出なかった。結局、2日目は、双方とも譲らず、交渉事に疲れたので、この問題を翌日に持ち越すこととなった。

私はその日の夕食を、A社の方々と一緒にしたが、皆、意気消沈して、飲食物が喉を通らないようであった。A社の方々の意見もまちまちで、「絶対に補償をすべきではない。」と言う者、ある程度までの妥協をすべきと言うが具体的にどのような内容にするのかが言えない者、B社が最終製品を製造するのでA社には責任が及ばないであろうから、B社の言う通りに補償すべきと言う者で、意見がまとまらなかった。

当日の夜、私は帰宅後一晩中考え続けた。

翌日、9時から協議が再開された。その再開と同時に、B社は、我々にA4版200枚位の英文書類を渡してきた。ただ、私は、これらの英文書類をちょっと見ただけで、昨晩考えた、A社として補償を一切行えない理由を30分程度かけて説明した(これに言及すると冗長になるので、本稿では割愛する)。B社は、私の説明を全面的に受け入れ、PL 事故等についても100%B社側が責任を負い、A社に対して補償を求めないことになった。

前記の英文書類を見ると、「保証(Warranty)」条項と「補償(Indemnification)」条項のB社側としての条文案で各々30例程度もあった。その条文案全てにおいて、当事者名がA社とB社になっていた。先ず、一晩でこれだけのデータを揃えて提示してきたことに驚いた。内容的には、全ての条文が、B社有利となっていた。これは、当時の日本企業では、絶対に真似のできないことであった。

私がB社のメンツも立てて、そのデータの中から使えるものを選択し、A社有利に条文を書き換えて、A社とB社間で目出度く合意に至ったしだいである。

その後の成約セレモニー・パーティで、私は、B社に対して、何故こんなに早く、しかもB社に有利な条文を揃えて提示できたのかを尋ねた。その時のB社からの説明では、①B社には、B社が作成するための契約書例と条項例がデータベース化されている、②これに特定の人がIDとパスワードでアクセスでき、ダウンロードできる、③全てのデータはB社の社内審査を通っているので、B社の誰でもこれを利用できる、ということであった。この事例は、20年ぐらい前の話である。やはり、米国の大企業は、すごいことをしているものだと感心した。このようなベースがあって、契約書の原案を素早く作れ、契約交渉もスムーズに行うことができることを目の当たりにした。この事実から、米国の労働生産性の高さを感じ取った次第である。

一方、私としては、自分がやってきたことに、少なからず自信を持った。IBDも、30年以上も前から契約書のデータベース化に取り組んできていたからである。しかも、IBDの契約書データベースは、英語と日本語の完全対訳式であるので、B社の英文だけよりも、遥かに難しい面倒な作業である。しかし、何はともあれ、世界中、考えることは共通しているものだと思った。労働生産性の向上を目指す日本企業の参考となれば幸いである。(物部一二三)

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(第21回)
「デザイン・ライセンスについて」

1)デザインとは
デザインという用語は、大変に広い意味を持っています。日本語訳としても、意匠、設計、計画、図案などがありますが、どうしても日本語にならないのでデザインをそのまま日本語として使うこともあります。工業所有権法関係でも、単に意匠のみをデザインと言うのではなく、日本語化しているデザインを含んだ広い意味を表しています。ただ、意匠法上で意匠をデザインと言っていますので、この法律の下では、意匠のみに限定してデザインという用語を解釈しなければなりません。

知的財産取引の対象となるデザインは、広い意味のデザインであることが一般的です。すなわち、意匠、図形、模様、形、ロゴ、標章などを広く対象とします。従って、当事者間で契約により、契約の対象とするデザインを定義します。デザインも譲渡できますし、ライセンスもできますが、どちらかと言えばライセンス取引がよく行われています。

2)ライセンスの実態
上記のように、デザインには種々ありますので、これらをライセンスする場合も、種々の態様があります。中でも、次のようなデザイン・ライセンスがよく見られます。

① 衣装などのデザイン・ライセンス
a.取引の対象となるデザイン
衣装のデザインは、最も歴史の古いものの一つです。古くはデザイナーと言えば、衣装デザイナーを指すことが圧倒的に多かったものです。しかし今日では、デザインの対象はもっと広い意味で身に付ける物一般となり、これらの物品の形ないし型、意匠などを創造し、広く流行させることが行われています。つまり、デザイナーの今日的姿としては、単に衣装だけでなく装身具とか日用品一般のデザイナーとしても活躍しているということです。これらは彼らの芸術的才能の豊さが広く利用されているわけです。彼らが創り出すデザインが素晴らしいことは勿論ですが、ある程度の名声が築かれると、デザイナーの名称が商標やロゴとなり、彼らのデザインとその商標やロゴが一体となって、それらが使われた商品の価値を高めることとなります。

しかし、デザインの良さと、商標やロゴの名声とが切り離されてしまう現象も生じています。現実的には、他人がデザインした物に、有名なデザイナーの商標やロゴが使われることにより、その物品をそのデザイナーがデザインしたかのような印象を与え、消費者に購入意欲を持たせるビジネスも多く行われています。デザインをビジネスの対象とする限りやむを得ない現象かもしれませんが、ちょっと考えさせられます。

この種のデザイン・ライセンスは、デザイナーまたはそのデザイナーのデザインを管理する企業体がライセンサーとなり、そのデザインを利用して商品を製造販売する企業がライセンシーとなります。ライセンサーは、すでに創作した作品の中から、ライセンシーに好みのデザインを選ばせることもありますし、または契約締結時点ではいまだ創作していませんが、契約で取り決めた一定期限までに作品を創作し、それをライセンシーに呈示して選択させるという方法をとることもあります。後者の方法においては、デザインが契約時に存在しませんが、過去のデザイナーの実績と、契約上のデザインをするという債務を信じて取引が行われることになります。

b.デザイン料
デザイン料は、頭金とランニング・ロイヤリティに分けられて設定されることが多いようですが、この点もケースバイケースです。頭金は、デザインの点数毎ないしそのデザインを利用する商品の点数によって定められることが一般的です。また、契約時点においてデザインが存在しない場合にはライセンシーに頭金を要求しないこともありますが、契約を締結するとライセンサーはデザインの創作にかかることになりますので、ライセンス料として頭金を要求することも珍しくありません。

ランニング・ロイヤリティが設定されることが多いと言いましたが、それに代えて、ペイドアップ方式が行われることも時たまあります。しかしながら、ペイドアップ・ライセンス料の設定は、ライセンサーとライセンシーの双方にとって難しいため、この方式はあまり利用されていないようです。ただ、デザイン、商品、販売計画などをよく考えたうえで、ペイドアップ方式の採用を検討することは、特にライセンシーにとって有意義なことと言えそうです。

契約時にデザインが存在しない場合には、少々やっかいな問題が想定されます。まず、将来ライセンサーが、ライセンシーにとって気に入るデザインを創作してくれるか否かの保証がありません。ライセンシーにとって気に入るデザインが出現しなければ、契約の意味がなくなります。特に頭金などを支払っているような場合、捨て金ということになってしまいます。一方のライセンサー側に立ってみると、自分では立派なデザインを創作したと思っていても、ライセンシーがそれを拒否すれば、取引が進まなくなります。苦労してデザインしても、将来のランニングロイヤルティーなどが入らないばかりか、頭金として受領したライセンス料すら返済を求められたりすれば、たまったものではありません。従って、せっかく受領した頭金は理由のいかんを問わず返済しない、という措置をライセンサーが取る可能性が出て来ます。

しかし、上記は、大変に理論的に過ぎると見てよいでしょう。というのは、実際のデザイン・ライセンス取引は、ライセンサーの過去の実績、契約時点における実力と活動状況、将来の予測等から見て、ライセンサーが契約どおりにデザインを確実に創作するということを疑うことなく行われているからです。実際、契約締結後の一定期限内に、ライセンサーがライセンシーの気に入ったデザインを創作できなかった、というような例はあまりありません。

c.デザインは誰がするか
ところが、前に述べたように、デザイナーのデザイン創作と、デザイナーの名声、商標、ロゴなどが切り離されているような場合、上記とは事情が異なってきます。すなわち、デザインの名声が高いと、その商標とかロゴが独り歩きして、他人がデザインした作品にでもフィットしてしまうケースがあるからです。こうなると、商標ライセンスと区分がつかなくなります。しかしながら、デザイン・ライセンスである以上、ライセンサーは、創作された作品のデザインをしっかり管理することにしています(ほとんど管理もないこともありますが…)。
具体的な展開の多くは次のようになっています。すなわち、まず、ライセンサーが一定期限までにデザインすることにし、その期日に彼のデザインをライセンシーに呈示します。その中で、ライセンシーが気に入ったものがあれば(通常は必ず気に入ったものが存在します。)、選択して、契約品として製造販売します。一方、ライセンシーは、随時、自らまたは他人に創作させたデザインの作品をライセンサーに呈示します。その中で、ライセンサーは、自ら気に入ったものがあれば、その作品に、彼の名称、商標、ロゴなどを使うことを許諾します。よほど劣悪なものでない限り、許諾することが多いようです。時々、ライセンシーが呈示した作品を、ライセンサーが手直ししたうえで、そのような許諾を行うことがあります。その逆に、ライセンサーが呈示した作品について、ライセンシーが修正案を出すこともあります。

上記のようなデザイン・ライセンスは、この結果生産される商品を購入して使用する消費者を欺いているようにも見えますが、まず、欺く目的で行われていないようです。特に国際的なデザイン・ライセンスの難しさには、どんな立派なデザイナーといえども全世界の国民にフィットする作品を創ることの難しさもあります。これを克服するためには、国際間でプロとプロとが調整をすることも必要となるわけです。

②一般製品のデザイン・ライセンス

a.取引の対象となるデザイン
ここで述べるデザインというのは、例えば機械部品、電子部品、食品などの包装品、玩具、その他産業用および日用品などの一般製品のデザインで、これらの外観が美しく整っていることから、また設計上使いやすくもしくはなじみやすくなっていることから、その販売が有利に展開できるほど価値のあるデザインのことです。このようなデザインには、登録されているもの(意匠登録、デザイン登録)もありますし、登録されていないものもあります。ただし、登録されていなくとも、著作権(Copyright) 法上の保護を受けることができるものもあります(特に英米法系の国の著作権の適用範囲は非常に広いため、日本企業が製造した製品のものに類似する場合、デザインが、英米法諸国の企業の製品著作権侵害に当たるとして訴えられるケースが非常に多くあります)。

これらのデザインは、関係法により保護され、他人がデザイン所有権(または処分権者)から許諾を受けない限り使えないことが明確なものはともかく、この点が不明なデザインも多く、他人がデザイン所有者等に無断で、類似デザインの製品を製造販売して、紛争になるケースが時々あります。このような紛争においては、意匠法、デザイン関係法、著作権法のほかに不正競争防止法とか不正競業防止法などの法理論も展開され、法的に大変複雑な問題となります。従って、デザインの所有者(または処分権者)の法的立場は究明されることなく、すなわちデザインの法的効力を究明することはしないで、関係者間でデザイン・ライセンスがスムーズに行われているようです。

b.金型の貸与
この種のデザイン・ライセンスにおいても、ライセンサーがライセンシーに特定のデザインのライセンスを与えることだけで、ライセンシーがそのデザインの製品を製造販売できてしまうものと、そうでないものとがあります。すなわち、ライセンサーが、ライセンシーに対して技術指導を行わねばならなかったり、金型などを貸与しなければならないケースがあります。

技術指導においては、一般の工程技術のライセンスの場合と同様に、対象デザインを具現する製品の製造方法を伝授することになります。この中には、金型の作製についての技術も含まれることが一般です。しかしながら、
ライセンサーが、金型の作製技術を与えたくない場合、ライセンシーが、金型の作製まで希望しない場合(作製経費が大きくなってしまうなどの理由によって)にはライセンサーが、ライセンシーに金型を貸与することもあります。この金型の貸与をめぐって、ライセンサーとライセンシーの間に諸々のやりとりが行われるのですが、次のようなことは明確にしておかねばなりません。

・貸与する金型の特定
・貸与期間および時期
・貸与料とその支払い
・金型の保守
・ライセンシーの使用回数
・金型の管理と危険負担
・金型の返却またはライセンシーによる買い取り

c.検品
デザインでは、特に外観の好イメージを大切にしますので、すべてのデザイン・ライセンスにおいて、ライセンサーはライセンシーが製造した製品の品質を気にします。そのために、ライセンサーは、ライセンシーが製品を販売する前に、ライセンシーが製品の検査を厳しく行うよう要求します。場合によっては、ライセンサーは、自ら検品することもあります。検品の結果、不合格品があれば、これを販売させません。ところが、悪いライセンシーになると、こっそりと不合格品を販売してしまうことがあります。実際、良品と不良品とは、素人目では区別がつかないくらいの差であることも多いからです。しかしながら、このような不良品が出回ると、ライセンサーのデザインの値打ちが徐々に下がってしまいます。ライセンサーはこのようなことがないよう、ライセンシーの製造販売管理を怠らないようにします。

3)デザインの模倣

実社会では、デザインの模倣がかなり行われています。中にはコピーであると宣伝して製造販売している業者すらあります。この現象は発展途上国だけではなく、わが国にも見られます。

デザインは、登録していないものも多く、模倣が工業所有権法や著作権法では取り締まれないことがあります。これをよいことに、模倣が多く行われているようです。模倣についての対応は、各国ごとに違いがあります。それは、
a.全く対応をしない国
b.商道徳的観点からしか見ない国
c.著作権の適用範囲を広くしてその侵害として取り締まったり、権利者に権利主張を許す国
d.不正競争防止法を適用して、デザイン所有権を擁護する国
などに分かれます。わが国では上記の b. またはせいぜい d. があり得る程度と言われていますが、他の国と同じくすっきりしないものがあります。欧米諸国においては、商道徳的な観点というよりも、他人の物マネをすることを根本的に嫌いますので、あまり模倣ということは発生しません。それに比べるとわが国では、良い物があるとそれをすぐに取り入れる傾向があり、かなりの会社が模倣めいたことをします。この点はデザインについてだけでなく、種々の事物に発生しています。

模倣に見えて模倣でないものがあります。例えば、用途により誰が考えても四角となったり丸くなってしまうような製品があります。場合によっては、それらの製品上のトレードマークを表示する個所さえ同じになってしまうこともあります。製品によっては、色彩すら他と同様にせざるを得ないようなものもあります。このような製品についても、会社間で紛争が生じることがありますが、単純なこととは言え、法的に判断することが大変に難しくなってしまいます。

上記のような問題は、裁判や仲裁でも解決が難しいわけですから、やはり当事者間で事前に話し合いをすべきことです。後で製造販売をする者は、先に製造販売している者に対して、模倣の場合は当然として、模倣ではないが、模倣と見られてしまう可能性があれば、協議を申し入れるべきでしょう。その結果、デザイン・ライセンス契約に入るとしても、低率のロイヤルティの支払いで済むことが結構あります。協議や契約を拒否されたときには、やはり弁理士とか弁護士によく相談したうえで、正当な対策を立てる必要があります。黙って模倣してしまうことは、法的責任がないとしても良いことではありません。

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「契約をベースとする様々な国際事業」
Q
殆どに事業において、契約が重要な役割を果たすことを承知しております。この点で、契約書の作成を国内契約書と国際契約書を区分しないで取り扱って構わないでしょうか。或いは、国内契約書と国際契約書を区分して取り扱う必要があるでしょうか。また、できれば、特に国際事業で契約書が決定的役割を果たす事業の主なものの説明をお願いしいます。
A
大変難しい質問ですね。国際事業には種々ありますが、それら事業の骨格が契約で形作られているものが非常に多いのです。この点、国内事業にも多くの契約が存在し、同様のことが言えるのではないかとの考えもありましょうが、国内事業における契約の意義と国際事業における契約の意義とは全く異なると認識して、国際事業に当たらねばなりません。この認識がないと国際事業に失敗する可能性が高くなります。国内事業では、契約書に詳しい記載がなくとも共通法がありますので、それでカバーされます。また、商慣習も共通なので、契約書で実務的なことを全て記載する必要がありません。更に、コミュニケーションも簡単なので、問題が起きても円満に解決できることが圧倒的に多いでしょう。ところが、国際事業では、ビジネス・パートナー間の共通法は殆どありません。どちらかの国の法律を準拠法としても、外国の法律に従わざるを得ない当事者側は、非常に不安です。また、国際的に共通する商慣習も、あまりありません。更に、コミュニケーションにも難しさがあり、問題が発生するとこじれる可能性が高いのです。かかることから、国際事業を円滑にするために、非常に詳しい契約書を作成して、それに乗っ取って事業を推進してゆくのです。そこで、契約をベースとしてどのような国際事業が展開されているかを眺めてみることにします。a.売買契約関係
輸出入事業では売買契約が交わされて実施されています。大型のものは単発の契約で取り決められて双方の履行が終われば完了します。一般の輸出入事業は、まず双方が継続的売買契約を締結して、基本的な取引条件を定めます。これを基本契約と言っています。しかし具体的な売買は、次々に個々の売買契約が締結されて履行されてゆくことになります。個々の売買契約書で、売買契約の要素たる商品、数量、価格、納期、支払日等が明示されて完結した売買契約が成立することになります。

販売店事業は、他社が製造した商品の販売権を与えられ、特定の地域で販売を実施してゆくのですが、その時に販売店契約を締結します。前記継続的売買契約とよく似ていますが、販売店は、販売権という特権を与えられ、それをベースに事業が成り立ち、これを取り上げられると事業は消滅することになります。

非常に特殊なものですが、M&Aも売買契約で実施されます。売買の対象は、株式か資産ですが、M&A自体が大変な事業です。従って、契約書及び付属書もかなり膨大なものとなります。契約交渉を曖昧なものにすると、とんでもない大損失を起こすことになります。最近では、東芝のウェスティンハ・ハウスの買収失敗例があります。

b.業務委(受)託(委任又は準委任)契約関係
代理店事業は、わが国では代理商と言われていますが、他社の商品を、その他社に代わって販売し、手数料収益をあげる事業で、その時に代理店契約を締結します。販売店契約に似ていますが、代理店はあくまで他人の代理をするだけですので、自らの勘定と危険負担で取引をする販売店とは異なるのです。代理店事業には、販売ではなく買い付けを業とするものもありますし、その他の性質のものもあります。

業務委(受)託事業は、文字通りの特別業務を委(受)託する事業がありますが、その業務をそのまま表して、製造委(受)託事業、研究委(受)託事業、開発委(受)託事業、経営委(受)託事業等のバラエティに分けることができます。主として役務、特別能力を駆使して事業が遂行されますが、その成果である物理的な物を仕上げて提供することもあります。これらについても、各々の業務委託契約が締結されて事業が行われます。

この種の事業には、各国に特別法が存在し、受託者側を保護することがありますので、委託者側は特に気を付けねばなりません。

c.請負契約関係
OEM事業は、製造業者がOEMの下請けとして物品を製造し、OEMに供給する事業です。このためにOEM契約が締結されます。ここでOEM契約を請負契約としますが、委託(準委任)契約、売買契約、使用貸借契約(技術、金型部分)、その他の契約とも類似した部分が多く、とてもわが国民法の典型契約の一つの枠内にはまりません。

建設工事請負事業に関する契約は、請負契約の典型的なものです。しかし、国際事業に関するこの種の契約書では、微に入り細に入り諸条件が取り決められます。そうしておかなければ、事業も円滑に推進することができません。

プラント建設事業に関する契約も請負契約として捉えられています。しかし、わが国のような法体系下の典型契約中の請負契約ではカバーし切れない。即ち、プラント建設事業全体を見ると、典型契約として分けられているほとんどの契約が、その中で展開されていることに注意すべきです。

d.使用・消費貸借・実施許諾契約関係
リース事業においては、リース契約が締結される。リースの対象物件としては、動産・不動産の両方がありますが、貸借期間中に消耗し尽くす物と、そうでない物とがあります。リースを大きく分けると、金融の代替的なファイナンス・リースと正に使用貸借のためのオペレーション・リースがあります。リース業者の事業は、正にリース自体で成り立っています。一方、借り手の方も、如何にリースを巧く利用してゆくかが、国際事業の成功・不成功、リスク・ヘッジにつながっていると言えます。

ローン事業においては、金銭消費貸借契約が締結されます。ローン事業自体を行うのは、銀行、その他の金融会社ですが、その相手は一般企業である。ただローン契約書は、公的融資を受ける場合の契約書を除いて、比較的単純なものです。公的機関とのローン契約は、資金運用事業に関して、また運用方法に関して諸制限があるのが普通です。国際事業における金融財務も、非常に大きなファクターです。

ライセンス事業は技術交流を目的として行われ、技術等を他人に使わせて、使用料を支払って貰うことを主とする事業です。典型的なものは、特許やノウハウを対象としますが、中には、商標、著作物、企業機密(営業技術、ノレン、その他のトレード・シークレッツ)等を対象とするものもあります。技術等の導入者は、自己で開発するよりも金銭的及び時間的に経済的で、しかも確実なものが取得できるので事業が行い易いことが多いのです。この種の事業にも契約次第の面がありますので、契約書作成が大きなポイントです。同じく知的財産を対象とするものでも、当該知的財産が売買されるものもありますし、ライセンスと売買の折衷的なペイド・アップ・ライセンス等もあります。これらのためには、各々に適合する契約を締結します。

国際的にフランチャイズ事業も多くなっています。フランチャイズ事業は、ライセンス事業の一種ですが、主たる対象は、経営技術です。フランチャイズ事業においては、経営技術の所有者が、特定の商品やサービス(役務)を販売する高度なシステム(経営技術)を確立し、その経営技術の使用権を他人に与えて使用料を支払ってもらうとともに、場合によっては、商品やサービスも提供してその代金を受け取ります。このために締結する契約がフランチャイズ契約です。フランチャイズ事業は、その中が何段階ものフランチャイズ・システムにも分けられていたり、フランチャイズの性格・範囲・権利移転について多くのバラエティに分けられ、それぞれにフィットする契約書が作成されます。結局、事業内容は契約書の内容次第となります。

e.役務提供契約関係
国際事業でも役務提供契約は多くあります。典型的なものは雇用契約ですが、一般的な従業員の雇用と、特別職、役員等の雇用契約には大きな違いがあります。合弁事業や現地法人の運営等では、特に外国人と如何なる雇用契約を締結するか大きな問題となります。日本人は他人を端から信頼してかかり、気に入った人なら外国人であろうと雇用契約書を作成しないで雇入れますが、この方法はあまりよろしくありません。人材の有効利用は、事業の成否に係わる重要事項と心得、雇用契約書を明確にしておくべきです。

国際間の人材交流が盛んになると共に国際人材派遣事業が成り立つようになってきました。ただ、国際人材交流が望ましいことであると言っても、各国の国政に大きな影響を与えるため、各国政府は、外国からの役務(労務)の導入を厳しく規制しています。いずれにしてもそれらの規制を前提とし、人材派遣事業を如何に運営するかを考え、雇用契約ないし役務提供契約を含む業務提携契約を基礎として、事業構造を作ることになります。

主として技術的役務を提供するエンジニアリング事業も国際間で活発に行われています。エンジニアリングは大型設備の設計作業が目立ちますが、技術の組み合わせをする技術役務であり、化学品等の設計作業等も含まれます。エンジニアリングの技術的成果を見て、製造(工程)技術等と同じレベルで考えられることもありますが、エンジニアリング事業では役務が中心となり、対価も役務から積算してゆくことが一般的ですので、他の技術を対象とする事業とは区分されます。この事業の遂行においては、エンジニアリング契約が締結されます。

f.共同事業契約関係
国際間の共同事業も多くなっています。より適切なパートナーを、自国内だけでなく海外に求め、共同して同一目的を追求してゆく事業です。最近は、技術分野における共同事業も多いが、その典型的なものが共同研究開発事業です。共同研究開発事業では、それ自体が収益をあげるものではありませんが、それから技術的成果が得られ、その成果が将来的に金銭的収益を生み出すのです。その一連の事業の進展を明確に定めておくために、共同研究開発契約が締結されます。

共同事業が大型化し、それ自体が収益をもたらすものが、ジョイント・ベンチャー、コンソーシャム事業、パートナーシップ、合弁会社事業で、各々詳細な契約書が締結されます。

g.その他
国際事業が、多くの契約を骨格として展開されていることは上記の通りす。実は、もっともっと多くの種類の契約が締結され、それらを基礎として国際事業が推進され、又は事業の中に組み込まれて事業の性格を決定付けているのです。従って、国際事業は、契約を論じることなくして語れないのです。契約は、特に国際事業においては単に法的担保の道具としての機能を持つばかりではなく、事業戦略であり、事業手法なのです。この認識は、国際事業を行う場合には何時も忘れてはならなりません。

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