世界の海援隊–2018年6月

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2018年6月28日更新

【提言】

「天網恢恢疎にして失わず」


老子については、その氏名、生存年代(紀元前6世紀頃)、著作物、生き様、人的交流等々、諸説あって、とても私の調査の及ぶところではない。ただ、「天網恢恢疎にして漏らさず」という名言は、随分前から私も知っている。この名言の実際は、「天網恢恢疎にして失わず」ということらしいが、少しニュアンスの違いがあるものの、大義は同じと見てよいだろう。今、世界を見ると、この名句が生きているのかどうかは分からない。

わが国においても、親鸞が著した教行信証で、「(口語訳)このような因縁を思えば、みずからは悪行をおかした提婆達多も阿闍世も、韋提希夫人やその夫頻婆娑羅王も全て同様に、煩悩に苦しむ者たちを救済するために出現した仏の化身といえる。」と、善悪を超越した思想を述べている。しかしながら、これが通用するのはほんの一部と見ておかねばならない。

太古の昔から見ると、実際には暴力や憎悪が支配的だった時代から、善行や友愛も通用する現代が到来したと言えよう。ただ、現代は、暴力、憎悪、嫉妬、善行、友愛等が入り混じって併存するので、まだまだ油断が許されない人間世界であると見なければならないだろう。

米国のトランプ大統領と北朝鮮の金委員長が、“セイキ”の会談をした。方や世界一の大国のトップで、他方は前時代的な専制君主である。共通点は、両者とも、利己主義の塊で、自分ファーストであることである。会談の結果は、金委員長の勝のようで、多くのものを得た。それらのものを与えたのはトランプ大統領である。この差はどこから出たのかと言えば、金委員長は天命として自己保身に走り、トランプ大統領は、職務上で自己保身が出たに過ぎないからである。

米朝会談では、今のところ、国際的に見て、何の成果も生まれず、逆に、金委員長とそれを取り巻く幹部で構成される体制保証という悪の温存が保証されたという結果が出たと言うのは私だけであろうか。ただ、この保証は、トランプ大統領が金委員長に与えたものに過ぎない。これで一番失望した者達は、北朝鮮人民の可能性が大きい。米国に対して面と向かって言えないが、日本も失望者の一人である。韓国には、米朝会談で民族の統一と言う悲願の観点から、南北朝鮮の統一国家の誕生に近づいたという考えがある。また、あわよくば、北の核兵器は温存したままの統一が良いという本音部分も隠してありそうだ。しかしながら、共産主義と自由主義の統一は有り得ないというのが常識的な見方であるので、この問題を如何に解決するかである。

米朝会談の結果を一番歓迎したのは、北朝鮮政府と、中国であろう。専制君主である金委員長が存命し、共産主義が残ったので、中国と北朝鮮との連携プレイが維持できる。あわよくば、朝鮮半島の南北統一で、全体(韓国も含む)が中国の勢力圏に入る可能性が出てきたのである。

歴史的に見ると、朝鮮半島は、長い期間中国の属国として位置付けられてきたが、ロシアの南下のターゲットとなり、1910年には日本が漁夫の利を得て、その後35年間に亙って植民地にした。このような事態も、李朝の末期で、朝鮮半島の政治が混乱していたことに付け込まれたともいえる。第二次世界大戦後は、ソ連のバックアップで1948年に金日成によって作られた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が成立し、1950年には大韓民国(韓国)に進出したため、韓国と米国を中心とする連合国との争いとなったが、1953年の休戦に至った。その後、北朝鮮は韓国進出を狙って今日に至るも、韓国を保護する米国軍の前ではどうにもならない。そこで、核武装を目論み、今や数十発の核弾道を有する国となり、米国に達する核弾道を開発したということになっている。そのために、核武装解除を要求する米国との間で、“セイキ”の会談が持たれた。

わが国では、マスコミを中心に物見遊山的に“セイキ”の会談を見ている国民もいるが、北朝鮮は、韓国や米国のみに敵対しているのではなく、むしろ、わが国への敵意を強く表明している。そのために、拉致問題を起こし、過去の朝鮮半島の植民地化に対する賠償を強く請求する機会を狙っている。わが国には、これらの問題に対する認識が弱過ぎる。確かに拉致問題も、弾道をわが国に向けていることも許せないが、わが国がすべて正しいとは言えないこともあろう。即ち、過去からの朝鮮半島におけるわが国の功罪を真剣に検証したうえ、南北朝鮮と大人の交渉をしなければならない。

このような観点から、「天網恢恢疎にして失わず」を、わが国を含む関係国を全て観察して、吟味してみる必要があろう。一方、元々(紀元前6世紀)に生まれたイソップ寓話にあって、中村正直が翻訳した英国作家のサミュエル・スマイルズの“Self-Help”中の格言「天は自らを助くる者を助く。」(Heaven helps those who help themselves. )がある。天(神)ばかりを頼みにするのではなく、自助努力こそが自らを救うという趣旨である。さて、皆様はどちらを選択されますか?(物部一二三)

 

 

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(第22回)
「オプションについて」

国際取引にはオプションという用語がよく出て来ます。このオプションという用語は、既に日本語化しており、例えば車を購入する場合などに、○○部分はオプションですと言われると、購入者の判断でその部品を購入するか否かを決定して、購入すると決定したならば、その分の代金を支払って車にその部品を取り付けてもらうということになります。

国際取引においては、上記の例のように軽く使われることなく、例えば、オプション契約、オプション料、オプション期間などと厳格に使われます。ということは、専門的にオプションという用語を使うためには、特に国際的な取引の交渉を進めるためには、正確にこの用語の意味を理解しておかねばならないことになります。以下オプションについて、基本的なことを考えてみましょう。

オプション (option) という用語は英語ですが、これを英和辞典で引いてみると「選択」という日本語になっています。国際取引のためには、これだけでは正確な意味が判りません。実は知的財産取引やその他の国際取引で使うオプションという言葉は、法律的用語なのです。特に英米の契約法上の専門用語として使われるということを認識しておく必要があります。

さて、契約は、通常の場合に申込み(offer) と承諾(acceptance)で成立します。申込みというのは、契約になるための要素を全部含んでいなければなりません。例えば、△△型のテレビ1台12万円買って下さい、というが如しです。この文中には下線部が4つありますが、どれを欠いても申込みとはなりません(その他の諸条件、例えば引渡し時期なども重要ですが、法律上一般的には契約の要素にはしません)。

この申込みを受け取った者は、「はい、買います」か、または「いいえ、買いません」のいずれかで返事をすることになりますが、すなわち、Yes か No かで答えればよいわけですが、Yes と答えればこれが承諾となり契約が成立します。当然にNoと答えれば契約は成立しません。また△△型ではなくて、○○型にすれば買いますだとか、12万円でなくて10万円ならば買いますなどと答えれば、やはり契約は成立しません。

ところで、返事をする側は、返事をするために考慮期間を必要とすることは言うまでもありません。ただ、考慮期間中に、申込み者が申込みを撤回する(withdraw)と困ってしまいます。従って日本法では、いったん出した申込みは相当の期間撤回してはならないとしています。いわゆる、信用信義を大切にした法原則となっています。一方英米法では、いつでも申込みを撤回してもよいことになっています。英米では、何も申込み者だけが一方的に申込みをしたままで、これを撤回をしないという義務(obligation)を負うべきでないとします。すなわち、二者の中、一方のみが約束(promise) をして義務を負うのは衡平(equitable) ではないというわけです。これが英米契約法上の法原則となっています。

しかしながら、英米契約法上の下では、取引が円滑に進むという点が不安定になります。そこで英米契約法上、売買契約(sales contract)などを目的とする申込みで、申込み者自らが、申込みを撤回しない期限を定めて行った申込み(確定的申込み:firm offer)は、その期限が3ヵ月を限度として有効なものとし、申込み者が、撤回しない旨の義務を負うことを認めています。但し、これも例外であって、一般的には、申込みはいつでも撤回できるという原則には変わりありません。

では、取引の安定のためにはどうすればよいか、これが問題です。この問題を解決するため、返事をする側の者が、考慮期間を買う、すなわち、返事をするために考慮期間をくれれば、申込み者にその対価(consideration) を支払うという方法が生まれたようです。考慮期間というのは、申込みをしたままの状態にしておく(keep open) 期間です。そして、この期間中に、返事をする側は、Yes かNoにつき、2者択一的(alternative) に選択(option)することになります。結局、申込み者が返事をする側に契約を成立させるか否かの選択権を付与することになり、目的とする契約と独立させて、選択権を付与する契約が発生したわけです。

オプションは、上記のように英米契約法上の理論から生まれていますが、今では、これが全世界に広まり、英米法圏外でも使用されるようになっています。株とか土地の売買などにおいては特に流行したようです。

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「ジョイント・ベンチャーとコンソ―シアム」
Q
国際事業で、合弁会社、共同事業体、ジョイント・ベンチャー、JV、コンソ―シアム等と言っていますが、これらは同じものを言っているのでしょうか。または、別々のもののことでしょうか。 何がどう違うのかの説明をお願いします。
A
1)ジョイント・ベンチャー
(1)ジョイント・ベンチャーとは
ジョイント・ベンチャー(joint venture)は、複数の者が共同で一つの事業を営み、収益をあげて利益を分配する企業体です。その構成は、ジョイント・ベンチャー契約によりますが、通常、全構成員は、取引相手や第三者に対して連帯責任を負います。ジョイント・ベンチャーを結成すると、構成員が内部的に契約により拠出金の割合、拠出人員の割合、その他の拠出物の割合を定め、その総合的貢献度によって、予め定めた割合で収益を分配することにします。また、損失が発生した場合も、その割合で構成員が負担します。ただ、かかる割合の決定が難しいことが多く、構成員が平等割合とすることもよく見られます。

単にジョイント・ベンチャーと言った場合は、その企業体が法人格を持ったものではなく、日本法で言えば組合的な組織に相当しますが、その目的とするところは、組合とはかなり異なります。確かに組合も構成員の利益を計りますが、事業を営んで収益をあげるというまでの目的を持たないことが一般的です。しかし、ジョイント・ベンチャーの場合は、ベンチャーという言葉が示すとおり、積極的にリスクのある事業に取り組み、大きな収益をあげることを目的としています。

(2)ジョイント・ベンチャーの種類
a.非法人ジョイント・ベンチャー
通常、ジョイント・ベンチャーと言えば、法人格を持たない共同企業体のことを指します。これを英語で、unincorporated joint ventureと言い、法人形態をとって行うjoint venture、即ち合弁会社(joint venture company)と区別しています。非法人ジョイント・ベンチャーは、鉱山の開発とか、建設工事とか、土木工事等で、ある一定の事業を達成すると、それ以上共同企業体を存続させる意味のない事業のために結成されることが一般的です。当事者の拠出物、利益の分配、損失の分担、危険の分担、構成員の権利義務関係等全てのことをジョイント・ベンチャー契約書で詳細に定めておかなければ、構成員の間でトラブルが発生する可能性が高くなります。

b.法人ジョイント・ベンチャー
非法人ジョイント・ベンチャーは、ある一定期間に達成できる事業のためには好都合ですが、半永久的に収益をあげ続けようとする共同事業には向きません。期間が長いと、その間、周囲の情勢の変化とか、構成員の変心とか、その他の予測できない事情が発生し、事業が挫折してしまう可能性が高いと言えます。半永久的な共同事業を求める場合は、法人を設立し、会社法の助けを借りて共同事業を推進してゆくのが便利です。この事業体が合弁会社です。合弁会社は、事業国の会社法やその他の法人格を与える法律に基づいて運営すると共に、出資者間で合弁事業契約を締結し、強行法規や取締法規に反しないよう条件を定めても運営してゆきます。近年、国際的な合弁会社が多くなっていますが、合弁会社には、非常に多くのメリットがありますので、今後も発展してゆくと思われます。

(3)ジョイント・ベンチャーの運営
非法人ジョイント・ベンチャーは、契約によって運営されますが、構成員の中から幹事を選定して、その下で力を合わせてゆく方法がよいでしょう。幹事を選定していないと、構成員の会議等も進みませんし、対外的な交渉も難しくなります。非法人ジョイント・ベンチャーは、一つの企業体を構成しているとは言え、対外的な交渉ないし契約の主体とは本来なり得ないことに注意しなければなりません。しかし、他の構成員から正式な委任を得ていれば、又は、国によっては非法人ジョイント・ベンチャーの法律行為の手続きが法定されていることもありますのでそれに従って法律行為を行うこともできますが、いずれにしても、代表者又は授権者を定めておき、様々な対外的な行為をできるようにしておくことが肝心です。

更に諸業務についても担当者を明らかにし、また、内部に必要とする委員会を作って、業務が円滑に行われるようにしておかねばなりません。行った業務、決定した事項、対外及び対内連絡事項も文書で記録するようにし、各構成員が事業の全体像及び各構成員が置かれている立場が明確に認識できるようにしておくべきです。特に金銭的な問題は構成員が分かり易くしておきます。共同事業は、1構成員の過失、怠慢、作業の遅滞等が、他の構成員の作業の遅滞や損失の原因となることが多いので、かかる不合理な行為を行った構成員は、その責任を負うようにしておくべきでしょう。

2)コンソーシアム
(1)コンソーシアムとは
広義で考えるとコンソーシアムは、非法人ジョイント・ベンチャーの一種であると言えます。特に、対外的な責任について、連帯責任を取るようにすることは共通です。ただ、一般的な傾向として、ジョイント・ベンチャーでは、構成員が事業全体を共同して行うことにし、予め定めた割合で利益と損失を分配することが一般的です。一方、コンソーシアムでは、事業全体を構成員間で分割し、構成員各々が割り当てられた作業を遂行して、それから発生する利益と損失を分配することなく各自が取得又は負担することが一般的です。しかし、両方とも契約でいかようにも定めることができ、各国の法律でも特別な定義や規制はないので(ジョイント・ベンチャーについては、希にその一部について法定している国がある)、両者を区分して論じることはあまり意味がありません。ジョイント・ベンチャーは、アメリカで発生して発展し、今や世界中で行われるようになっています。一方、コンソーシアムはヨーロッパで発生して発展し、これも今や世界中で行われています。

(2)コンソーシアムの形式と内容
あえてコンソーシアムの内容を、前記の性格に照準を当てて言いますと、構成員は、その持ち前の専門分野に符合する事業部分を引き受けることになりますが、現実的には、幹事構成員が、予め専門分野別に構成員候補を選抜して、次々に口説いてゆきます。入札案件では、入札前から、そのようにグループを結成し、共同して落札するよう契約書を交わします。この契約書は、prebid agreementと呼ばれています(これもconsortium agreementと言うことがある)。

晴れて入札に成功すると、正式なconsortium agreementを締結します。コンソーシアムの内容は、構成員がそれぞれの分担した作業を行い、利益も損失も各自の計算で行うことから、並列的に構成員が並ぶまでもないとして、コンソーシアムは止めて、元請けと下請け関係を形作ることにすることがあります。これがいわゆるmain contractorとsubcontractorの関係です。要するにコンソーシアムであれば幹事構成員となるところがmain contractorとなりその他の構成員となるところがsubcontractorsとなるのです。よって、この場合、subcontractorの行う作業部分に関するsubcontractorの契約相手は、main contractorとなります。

(3)コンソーシアムの運営
コンソーシアムの運営については、非法人ジョイント・ベンチャーの運営と大体同じです。ただ、コンソーシアムの場合、各構成員の分担作業は、それぞれ独立的に行われていますので、幹事構成員やその他の構成員との協力関係はジョイント・ベンチャーに比較して薄いものとなります。しかし、自己の分担した作業の遅れが他の構成員の損失の原因となるような場合、大きな賠償責任を発生せしめるので注意しなければなりません。(IBDコンサルタント)


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