世界の海援隊–2018年1月

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2018年1月5日更新


【提言】

「大アジア共栄圏の創造」

今年は、わが国が置かれている国際的環境が厳しいものとなっていますので、それにいかに対処すべきか、先ず、特にアジア諸国との関係に絞って所感を述べさせて頂きます。

スリランカの第2代大統領であったジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ氏(1906年~1196)は、キリスト教から仏教に改宗し、コロンボ法科大学で優秀な成績を修めて法律家となった。しかし法曹界には長くは留まらず、1938年、セイロン国家機構(CNC) の活動家となり、1946年に国民連帯同盟へ加入し、1947年に初代蔵相として入閣した。1951年に、国連にセイロン国蔵相として参加し、同年のサンフランシスコ講和会議にセイロン国の代表として出席した。その際の会議演説で同氏は、「日本の掲げた理想に独立を望むアジアの人々が共感を覚えたことを忘れないで欲しい」と述べ、また、「瞋恚(シンニ:自分の心にかなわないことに対し憎しみ憤る心作用)は瞋恚によって止むことはなく、慈愛によって止む」という釈尊の言葉を引用し、セイロン国(現スリランカ)は日本国に対する賠償請求を放棄する旨の演説を行って各国の賛同を得、日本が国際社会に復帰できる道筋を作ってくれたのである。

その後、同氏は、首相、大統領と要職を務めその間、たびたび訪日、更に政界引退後も日本を訪れている。また日本の仏教関係者をスリランカに招待するなど日本とスリランカの交流に尽力した。1989年、昭和天皇の大喪の礼に、本人の希望により夫人とともにプレマダーサ大統領の名代として参列したが、元首級参列者・大統領同格の国賓待遇とされた。1996年、死去に際し献眼(角膜)し、「右目はスリランカ人に、左目は日本人に」との遺言により、片目は日本に贈られ群馬県の女性に移植された。

一方、「日韓慰安婦問題」は、両国政府間で解決されたかに見えたが、特に文韓国大統領になってから、未解決事項であるとして取り扱われてきている。韓国では、韓国人慰安婦と称されている女性たちが、日本軍に強制連行された者達で、奴隷的な扱いで凌辱されたとしている。わが国では、韓国人慰安婦の存在を否定していないし、彼女達に苦痛を与え、尊厳を傷つけたことを認めて謝罪したが、強制連行はなく、奴隷的な取扱まではしておらず、それなりの報酬を支払って奉仕させたとしている。慰安婦の人数についても、韓国と日本の見解には、10倍以上の開きがある。ただ、日本人ジャーナリストや弁護士の少数が、確たる証拠もなく、売名行為のために事を大きく取り上げて、「慰安婦」とか「性奴隷」と言い出した。それに1990年代に入ってから韓国政府が付け込んできて、主張をどんどん拡大してきている。いずれにしても、もう、70年以上も前の話であり、真実も定かではなく、両国の見解の相違が甚だしい問題である。

このような立場の女性は、日本人は勿論のこと、中国人、フィリピン人、マレーシア人、インドネシア人、その他の国の人もいたが、戦後は、韓国人従軍慰安婦のような問題にはなっていない。これは、長い歴史の中で何処の国でも戦争があり、若者兵士の性のはけ口が、戦地に求められ、公娼制度が利用されたり、一部の女性がその要請に応じたり、中にはまさしく強姦のようなことも行われてきた事実が公然と存在したからであろう。一般に、戦時下においては、弱い女性達が犠牲になってしまうのが、何処でも見られたことだからである。但し、これらの多くは人権を蹂躙する犯罪であって、戦時下においても絶対に許されない行為であることに間違いない。

わが国としては、「日韓慰安婦問題」に関して事実を科学的に究明し、日本国民、韓国人に詳細を説明する責任がある。同様に、韓国としても、事実を科学的に究明し、その事実に則して、未だ賠償や補償が不足する部分があれば、請求すべきである。両政府とも、このような努力が不足している。

わが国は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との間にも深刻な問題を抱えている。北朝鮮は、第二次世界大戦までは、韓国と同様にわが国の植民地であった。その間、わが国は朝鮮半島の北部に位置する北朝鮮に多大な投資をして、朝鮮半島の発展を期したのは事実である。しかしながら、北朝鮮は、ロシアの支援を得て立国し、共産主義を標榜して今日に至ったが、国力はどんどん衰退してしまった。戦後から15年間位は、もともと農業国であった韓国よりも経済が発展していたが、その後貧国に陥った。その原因としては、様々なものが考えられるが、韓国との関係上、軍事優先の施策をして、国民の経済力の向上に尽くさなかったことがあろう。

北朝鮮の軍事偏重は留まるところを知らず、今や、各兵器を保有して、わが国を含む周辺国に大きな脅威となっている。正式には、仮想敵国として米国の名を掲げているが、核兵器を持ったとしても米国に打ち勝つことなどは、彼らの頭にはない筈である。それよりも、軍事による朝鮮半島の統一、わが国への威圧、(あわよくば)中国の一部の奪い取りを目論んであるといった方が当たっていよう。その背後には、中国というよりも、ロシアがいると見るべきである。100年以上も前から、ロシアは、極東アジアへの進出を悲願にしており、それが日ロの争いの素となってきている。ロシアは、第二次世界大戦の末期にわが国を攻撃し、樺太や北方領土を強奪したが、その欲望は留まるところを知らず、現在は、北朝鮮を利用して、極東アジアでの覇権を築こうとしていると見るべきである。

また、中国は、膨大な資金力、人力を使って、開発途上国を支配下に置くような政策を進めている。「一帯一路」と銘打っているが、中華思想をグローバルに展開しようとしている試みのようにも見え、中国の協力を得た国は、様々な中国の意向に逆らえないようになりそうだ。これも極めて危険な政策と言えよう。即ち、中国の協力を得た開発途上国は、経済関係はもとより、政治関係においても、軍事関係においても、中国の支配下に置かれ、それらの国の富は中国に吸収され、国際問題についても中国寄りの意見を出させられ、軍事において中国に利用されるという立場とならざるを得ない。

かかる情勢を見るとき、わが国は、如何なる方法で自国を守るかを真剣に考えねばならない。わが国には、日米安保条約があるので、わが国に万が一の場合には米国が防衛をしてくれるのではないかとの期待がある。しかし、この期待には何の根拠もない。米国が、中国やロシアを敵に回して、わが国のために米国人の血を流してくれるという期待はナイーブ過ぎる。第二次世界大戦時に、わが国と不可侵条約を結んでいたソ連を激しく突き、北方領土(北海道も含む)の提供を提案して 参戦させたのは米国である。それどころか、勝敗が決まっているのに、原爆を投下したのは米国に他ならない。

ただ、現時点では、一応、日米両国は、世界最強の軍事同盟を結んでいる。この状況を大切に維持する必要があることは十分に認識しなければならないが、100%米国の軍事力を頼るのも危険である。わが国は、第二次世界大戦で、大きな苦汁を舐めたが、米国への過大な期待を捨てて、自衛の道を本格的に考えねばならない時期に来ている。現実に、米国の世論調査では、米国にとって最も大切な国は、日本や英国ではなく、中国となってる。

幸いなことに、東南アジアにおける日本への信頼は現在でも非常に厚い。それは、ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ氏が、「日本の掲げた理想に独立を望むアジアの人々が共感を覚えたことを忘れないで欲しい」と述べて頂いたことが、スリランカのみならず、インドネシアをはじめとするアジア諸国で未だに生き付いている。わが国はこの延長線上で、アジア諸国と共に発展を遂げるのが一番良さそうだ。勿論、わが国の発展は、これらアジア諸国を踏み台にするのではなく、共存共栄でなければならない。

本年の国際事業開発株式会社(IBD)は、誠に微力ながら、「わが国はアジア諸国と共に発展を遂げる。」ということを命題にし、わが国とこれらの国との経済関係の強化に邁進することにしてゆくことにする。即ち、アジア諸国との技術、資本、文化の交流等を積極的に進めてゆく。昨年までは、その下地作りの段階であったが、今年は、種蒔きと、蒔いた種の成長を促進し、近い将来、アジア諸国と共に収穫が得られることに期待できるようにする。勿論、基本的精神は、わが国が、これらの国々をリードして、わが国と同じように発展を遂げて頂くことである。そして、地球上で最も勢いのある国々を育成し、「大アジア共栄圏」を構築し、更に世界が発展する牽引地帯になるようにしたい。

経済発展のためには、ややもすると、自然科学や技術面の発展にのみ照準を置きがちであるが、IBDは、アジア諸国の社会科学や文化面の発展も同時的且つ並行的に進めてゆきたい。具体的には、IBDの「国際ビジネス支援DB」の外国語版を作り、世界中で使える「教育用コンテンツ」を充実し、「ビジネス・マッチング事業」を強化する所存である。また、これらに参加する内外の企業に対して、資金供給も行うことにしている。

国々は、国際間の協調を促進するために条約を締結している。これと同様に、企業や個人は、契約を締結している。これらの条約や契約は、一方のみが有利なものであってはならず、WIN-WINの関係を創出し、双方ともがこれらを遵守し、違反する側は罰せられねばならない。これについて、個々の国、企業、個人では、見解の相違が現れ、力量に限界があるので、国際機関が素早く対応できる体制作りが望まれる。IBDとしては、特に国際間の平等な契約書の整備と、これを利用するネットワーク作りに邁進したい。可能な限り、AI要素を入れて、契約双方が合理的に契約書作りができるようにしたいと考えている。かかる条約や契約が、地球上を覆うとき、より平和な世界が創設されるものと信ずるのである。

皆様、どうぞ、今年のIBDの活動にご注目頂きますよう、お願い申し上げます。 

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(第20回)
「共同研究開発の成果の利用と処分」

共同研究開発の成果は、常に当事者間で共有されるとは限りません。むしろ各々が分担して研究開発して得た成果は、その成果を得た当事者により単独して所有されるというのが一般的です。本当の共同作業によって得た成果のみ、複数当事者によって共有されるというのが普通です。しかしながら、成果の帰属についても契約により前もって取り決めるべきもので、成果が出てからその時点で協議のうえ決定しようなどとするのは甘い考えです。特に国際的交渉に弱い日本企業は、この種の取引を曖昧に進めると、その目的が達成できなくなる公算が大です。共同研究開発の成果の帰属については、研究開発委託の説明部分で指摘したことと共通点があります。しかし、原則論的に言うと、研究用開発委託で受託者が得た成果は、委託者に帰属すべきものであり、共同研究開発で得た成果は共有すべきものとなります。ただ実務経験者ならすぐわかることですが、共同研究開発と言っても、各々の当事者は、各自が持っている技術の延長線上に共同開発で得る新技術が積み重ねられてゆくのであり、その技術を共有せねばならないという積極的な理由がありません。いずれにしても、共同研究開発の成果は次のいずれかになるでしょう。

イ.いずれかの研究開発者にのみ帰属するもの
ロ.複数者に共有されるもの
ハ.成果の実施者に帰属するもの
(この場合、実施しない当事者は、実施者に持ち分技術を譲渡することになり、そのための対価を要求することになる)

成果の帰属の問題は、結局は共同研究開発で得た技術をどちらが所有するかということですが、実務的には何も所有権にこだわる必要はありません。要は、上記で述べた共同研究開発の態様や目的に従って、各当事者の目的が達成できればよいわけで、そのために所有権を持たなくとも、実施権とかその他の権利があれば十分なことが一般的です。これをより具体的にみてゆきますと次のようになります。

① クロスライセンスをする

製造販売の実施について、両当事者間で調整をします。共同研究開発で得た成果たる技術は、相互に完全なクロスライセンスを行い、前記実施に支障のないようにします。この際、一方の当事者から他方の当事者へのロイヤルティ等の支払いがないのが一般的です。ただ、分担した研究開発の大小によっては、小部分を分担した側が、大部分を分担した側にロイヤルティを支払うこともあります。

② 成果の共有以外の利益を得る

相手の研究開発で得た成果の所有権を取得するとか少なくとも共有を主張する必要性はほとんどありません。相手の製造した物を最恵条件で購入する意図があるような場合、長期継続的売買契約を締結して安定供給を確保したり、ケースによっては、(一手)販売店契約などを締結して、目的とする事業を完成することが肝心です。

③ 共同事業を実施する

共同事業を実施するとすれば、相手の研究開発で得た成果の所有権を取得する必要性はまずありませんし、そのような主張はナンセンスです。両者の得た成果を常に結合して、良い共同事業を展開することがポイントですが、両者とも各々が得た成果を他の目的に利用することが難しいでしょうから、共同研究開発のみで共同作業が終わることは少ないでしょう。但し、いずれの当事者も、相手方当事者からその成果についてライセンスを得ておくのが無難です。

④ 各々が成果を別途に利用する

各当事者の目的に応じて、各々が成果の各種の権利を待たねばなりません。所有権を必要とすることもありますが、一定の範囲のライセンス程度で事足れりとなることも多いようです。

共同研究開発については、上記のポイントの他に「研究開発作業計画」、「費用の負担」等の問題もありますが、その都度その実情に合わせて協議して、問題点については、契約書で明確化してゆかなければなりません。(つづく)

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「英米法上の契約の消滅」
Q
国際契約を締結するにあたって、その成立と発効について、法律的にわが国と外国では大きな違いがあるのでしょうか。また、わが国では契約書に押印をしますが、外国では捺印ということを耳にします。押印と捺印とでは、その意義にどのような違いがあるのでしょうか。説明をお願いします。
A
1)英米法上の契約の消滅
英米法上、契約の消滅について特有のものとしてフラストレイションということが確かにあります。この法理論は日本法にはありませんので、特に注意しなければなりません。英米法上で広義の「契約消滅」とは、一度設定された権利・義務関係が無の状態に帰することであり、その意味からは履行による消滅、合意による消滅、履行不能による消滅、契約違反による消滅の4つが考えられます。その中の履行不能による消滅は、更に「履行不能」( Impossibility of Performance )と契約目的の「達成不能」( Frustration of the Object)と
に分類できます。即ち広義の履行不能とは、当事者の契約締結後予見しがたい事由が発生し、当事者がその契約を履行することが不可能になるか、または無意味になることですが、前者は狭義の履行不能であり、後者は契約目的の達成不能です。注意すべき点は、後者にあっては、履行行為自体は可能であるけれども、それを実現しても契約の目的が達成されない場合を指すということです。2)米国のRestatement中の取扱い
米国のRestatementでは、消滅事由として ImpossibilityとFrustraionとを区別しています。Restatement,§288 は、「両当事者が意図した(予期、希望した)契約目的がフラストレイトした時、反対の意思が明確化されていない限り、そのフラストレイション発生に関し、無過失且つそれによって契約目的を達し得ないという不利益を被る当事者は、自らの債務の履行を免れる」という主旨で、それを例解して、以下の3つのケースを挙げています。(a)甲は乙の窓辺に面した座席を、その窓辺を行進が通過する旨発表されていた日に借りることの対価として、乙に100ドル支払うと約束し、乙はそれに同意した。ところが、重要な官吏の病気のために行進は中止された。甲は免責される。(これはいわゆる戴冠式事件で、戴冠式の行進そのものが契約の基礎だろうから、その中止によって契約は消滅するとされた Krell V. Henry (1903)等の判決内容の主旨を要約したものである。)
(b)甲は、2つのヨットクラブの主催で開かれる国際ヨットレースの記念プログラムを印刷することを乙と合意し、乙はその対価として500ドル支払うことに合意した。ところが戦争のためにレースは中止された。甲、乙共に債務を免れる。
(c)甲は向こう3か月間、船を乙に貸すことを約束し、乙はその対価として毎月5,000ドル支払うことに合意した。ところが戦争のためにすべての航海が禁止された。乙は雇船料を支払うことを免れる。3)契約の解除による消滅とフラストレイションとの相違
契約違反があった場合は、その相手方は常に損害賠償を請求することができますが、契約違反を理由に契約を解除することが常にできるとは限りません。解除できるには重大な違反がなければならないのです。注意すべき点は、重大な契約違反があったとしても、Frustration による消滅とは異なって、契約が当然に消滅するわけではなく、相手方が、重大な違反によって発生した解除権を行使して、はじめて契約が消滅するということです。重大な契約違反とは、一般的に契約の実質的履行( Substantial Performance)を妨げる違反であると言われています。ある約款がその契約にとって基本となる重要なものであるとき、その条件をConditionと言い、付随的な担保約款をWarrantyと言いますが、一般的に条件違反の場合は解除権が発生するのに対し、担保約款違反の場合には損害賠償請求だけしかできないとされています。Frustration にあっては、契約当事者はその発生に関して全く責任がないので、あとはいずれの当事者がその危険を負担するかということが目的不達成ということから論じられます。一方、契約違反にあっては、違反者に帰責させることによって、いかに相手方を保護するかについて論じられるという本質的な相違があります。Frustration による契約消滅は、少なくとも契約当事者間の関係を契約締結前の状態のものに戻すことに尽き、それ以上の効果は生じないと言えますが、契約解除による効果はその性質が異なっています。ここで契約違反による契約解除について簡単に述べておきます。解除によっても、契約は将来に向かって消滅するし、両当事者は未履行債務の履行を免れることになります。その後の債務を免れる点では両当事者は平等ですが、解除権者は、違反者に対して例外なく損害賠償を請求することができるという点で、両者の地位は異なるのです。英米法上、契約違反に対する原則的な救済方法は損害賠償であり、そのような普通法上の金銭賠償では不充分であると判断される場合に限って、作為義務については契約内容どおりの履行を求める特定履行、または不作為義務については差止命令という衡平法上の請求権を行使できるのです。イギリスでは、契約解除の場合には損害賠償が第一義的であって、現状回復ということは起きないとされるのですが、わが国においては、現状回復を主として考えていますので(民法 545条)、その主義を異にしていると言えます。Restatement は、その §347~§357で、解除の場合にも広く現状回復( Restitution)を認めており、イギリスとは解除後の処理について異なった見解をとると言われています。

Frustration が両当事者の責に帰することのできない事由であるのに対し、契約解除の場合はまさに帰責原因に基づくものであるということを明確にするために、契約違反の態様について簡単に述べますと、わが国では、債務者がその責に帰すべき事由によって、債務の本旨に従った給付をしないことを債務不履行として、履行遅滞、履行不能、不完全履行の3つの態様に分類しています。英米法では、特に契約から生じた債務の不履行をとりあげて、Breach of Contractと呼んでいます。この Breach of Contractとは、契約において約束された事項の全部または一部を、正当な理由なく履行しないことであると一応定義づけることができます。しかし英米法では、契約違反として Impossibility Created by One Party, Failure to Performのほか Repudiation(履行拒絶)という概念を認め、履行期到来前に、債務者が履行しないという意思を表明した場合も契約違反として取り扱っています。

広義の履行不能を、原始的不能と後発的不能とに分類した場合、当事者の責に帰すべき事由に基づく後発的不能は契約違反となります。一方、当事者の責に帰すべきでない事由に基づくものとしては、例えば契約の目的物の第三者の不法行為による滅失などによる狭義の履行不能と、契約意図の実現挫折、いわゆる Frustraitonとがあり、即ち、後発的不能も内容的には2種類に分けられることになるのです。

4)契約の消滅事由
英米法におけるフラストレイションの法理上、後発的な履行不能によって契約が消滅する場合を、判例に従って類型化すると以下の4つになります。
(a)契約目的物の滅失
契約の目的物の存在が契約目的の達成に必要不可欠である場合に、その目的物が当事者の責に帰すべきでない事由によって滅失した時、契約は消滅する。
(b)個人的役務契約におけるその者の死亡または労務提供不能
労務提供義務者が死亡するかまたは帰責原因なくして労務の提供ができなくなった場合、契約は消滅する。
(c)法の変更または後発的不能
契約締結後に法律が変更され、その結果、締約時には適法であった契約が履行されることができなくなった場合、契約は消滅する。
(d)契約基礎の崩壊
契約締結後予期することができない事由によって、当事者の企図した実質的な目的が達成できなくなり、その契約目的が挫折した場合、即ち、契約上の債務自体は物理的には履行することはできるが、契約締結後の事情変更によって、履行を強制しても契約当時の意思を実現することにはならない場合、契約は消滅する。これが認められるためには、予想しなかった事情のために、単に履行が遅れるとか、履行が困難になったとか、費用が多くかかるというだけでは不充分で、その契約を履行させると、実質上契約締結の際に考えていたのとは別な契約を履行させる結果になるという極端な場合でなければならないとされている。

契約当時の意思実現について、ある事由の発生によって契約がフラストレイトされる理由として、黙示的条件( Implied Condition )の理論があります。即ち、ある目的物の存在または事情の存在が契約の達成に不可欠であることを当事者が知っていたはずの場合、つまりそれらの存在なくして契約の締結はあり得ないことを当事者が意図していたはずの場合、それが予見できない事由の発生により不存在という事態に陥ったときには、その契約を消滅させるという黙示的条件があったものと理解する考え方です。これがいわゆる Frustration法理の裏付けになっていることは事実ですが、現実問題として、どのような場合に Frustrationによる免責が認められるかということは、過去の判例を通して判断されるでしょうし、ケース・バイ・ケースで、事実問題としては、消滅事由は訴訟の場において合理的に解明されることにならざるを得ないと言えのです。(IBDコンサルタント)

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