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2017年8月10日更新【最新号】

【提言】

わが国の低い労働生産性が改善されないわけ

1945年8月6日には広島、同月9日には長崎に、米軍によって原子爆弾が投下され、同月15日に昭和天皇がラジオでわが国の連合国に対する降伏が公表され、終戦となった。この8月15日を、わが国では終戦日としている。これらの日に、日本国民は、戦没者に哀悼の意を表することが続いている。私も、強く哀悼の意を表したい。

米国は、1945年4月よりわが国本土を空爆していたが、わが国軍部が、劣勢にも拘らず「一億総玉砕」を唱えていたので、原子爆弾の投下となったと言われている。これは、わが国為政者の誤った政治に乗じた米国の言い訳であろう。わが国本土の空襲でも原子爆弾投下でも、その被害者の大半は一般日本国民であった。原子爆弾の投下の日には毎年、核兵器禁止を掲げた行事が行われ、核兵器が齎す悲惨さが主張され、かかる兵器を使うような行為が行われないことと、核兵器の拡散防止を世界各国に呼びかけている。それにも拘らず、今や、核兵器は米国以外の複数国によって保持されており、北朝鮮のように、それを強化しつつある国も存在する。

これらの核兵器禁止運動について私にも異存はないが、戦争がある限り、その運動が空虚に思えるのは私だけであろうか。戦争で尊い命を失うのは、むしろ兵卒と下士官までが圧倒的に多い。上官が命令を下し、下士官が切り込み隊長となり、兵卒が一線で戦うことになっているからである。更に戦争で尊い命を失うのは兵士達より一般人国民の方が多いというのも実態であるが、これは、通常の兵器を使った場合も、核兵器や化学兵器を使った場合も同じである。よって、核兵器禁止運動は、誠に中途半端なものなのである。

戦後のすぐで、私が小学校に入学した頃、親に「なぜ勉強しなければならないのか。」と何度か尋ねたことがある。これに対して親からは、「戦争に出ると、将校になって、部下の兵士に『進め、進め。』と命令ができ、自分が先頭を切って鉄砲玉に当たる必要がないからだ。」と説明を受けた覚えがある。我が親ながら勝手な説明であって、卑怯な日本人になった方が得というわけだ。誠に狡賢いことを教え込まれたものである。ただ、これも、他人はともかく自分の子供の命は守りたいという親心の一面を表しているのであろう。今は、この親の説明は間違いで、将校になったならば、部下に「俺について来い。」と言って先頭に立ってこそ上官というものだと考えている。

人類は止むを得ず戦わねばならない局面に遭遇することもあろうが、戦争は、為政者の無能、誤った判断、私欲追求等で発生することが殆どである。よって、国民は、そのような為政者を選んではならない。ただ、失敗して学ぶことが多いのであるが、ややもすると戦災を齎した為政者は、自己の失敗を糊塗するか曖昧にしてしまう。ひょっとして、原子爆弾を投下した米国の責任追及や核兵器禁止運動なども、戦争責任の糊塗に利用されている面もありそうである。正しい運動は、「戦争反対運動」でなければならず、国連等の国際機関に国家間の紛争や内乱の解決を全て委ねる方向への運動でなければならない。ただ、覇権主義の国はこの運動に反対するであろうから実現は難しいが、世界各国は、人類の英知でこれを不断に進める必要があろう。その前提として、各国は、正しい判断ができ、武力行使はせず、難局で逃げない、責任感の強い、平和的行動力のある為政者を持つことが肝心である。

閑話休題。

わが国の労働生産性が低いことは、政府の発表する広報で、また、わが国の経済学者やエコノミスト等の専門家によっても述べられている。それらの結論として、ICT(Information and Communication Technology : 情報通信技術 、即ち、電気、電子、磁気、電磁波などの物理現象や法則を応用した機械や器具を用いて情報を保存、加工、伝送する技術)の活用が足りないとか、TFP(Total Factor Productivity: 全要素生産性、即ち、労働、資本、原材料、技術等の各生産要素をそれぞれの収入に対するシェア等でウェイト付けした総投入指数で生産性を判断する方法)の値が低過ぎると言う。これも経済学的手法での「見立て」であろうが、単なる見立てで終わっているので、何故我が国の労働生産性が低いのかの原因究明にまでは辿り着かない。

わが国のICTの活用不足もTFPの低水準も、その見立ては間違いではないが、どのような点が活用不足なのか、低水準となっている要素(事項)は何なのかの究明が為されていないのである。それは、このようなことを論じる論客が、実は、実業の経験が殆ど無いからである。身体を張って、経営資源を駆使して事業を経営してみるとか、赤字を黒字に転換してみるとかする過程でこそ、低い労働生産性の究明が可能かもしれない。いや、それでも難しいことかもしれない。多くの企業経営の総合結果が、わが国の低い労働生産性を齎しているからである。

現在でも、わが国の企業経営において、経営陣や管理職は、部下から稟議が上がった場合、その欠陥を見つけ出すことが仕事と心得ている者が多い。即ち、稟議を潰して涼しい顔をする。又は、稟議の中身を保守的な方向に大幅につついて、稟議上奏者のやる気を挫く。欠陥が見つからない場合には、部下に向かって「突撃」命令を出す。成功しそうになってから腰を上げて、上司がその成果を自分の成果と吹聴する。失敗すると、稟議を上げた者の責任とする。小さな案件はともかく、大きな案件になると、ハイリスク・ハイリターンということになるので、上司の誰かが反対して、なかなか稟議が通らない。また、自分で思いついた新事業に取り掛かる経営陣や管理職は、部下に対して自己の指示通りの稟議を出すように命令する。この新事業が成功すると、経営陣や担当管理職は社内で大出世するが、失敗すると、部下の行為の失敗部分を見つけ出して、その責任にするか、失敗の原因究明をしないで、曖昧に葬り去る。これらも、事業の低迷や、低い労働生産性の大きな要因(factor)である。

企業の経営資源としては、①「ヒト(労働)」、②「モノ(商材)」、③「カネ(資本)」と従来から言われているが、現代では、これに④「マネジメント(経営)」をプラスしなければならない。①と②については、まさにICTの活用が不可欠である。この場合のICTは、情報伝達技術だけでは足らず、そのコンテンツに注目しなければならない。情報伝達技術も日進月歩であるので、より効率的なものを利用しなければならないが、その情報自体(コンテンツ)の価値評価が大切である。コンテンツには、どこにでもある一般情報と、非常に価値のある特別情報があるので、その区分と評価を間違ってはならない。

経営ノウハウは以前から存在するが、従来よりも格段に進歩したものが求められている。その一番は、事業を高い収益性のあるものにしなければならないことである。わが国の企業のマネジメントに欠けている点は、これである。事業を高い収益性のあるものにする能力を持った者こそが真の経営者と言えよう。従来の日本企業にありがちな薄利多売型の事業ではなく、高収益率のある事業デザインをする能力を持ったマネジメントが求められている。これは、事業の種類を増加するとか、事業規模を拡大する等ではなく、企業を、高収益の事業で固める経営作業である。例えば、売上100億円の事業の粗利が20億円のものよりも、売上50億円の事業の粗利が20億円のものに仕上げるような知的構築作業である。この構築作業のためには、情報収集力、智慧、判断力、行動力、交渉力等の要素が必要である。事業としては前者が低労働生産性、後者が高労働生産性であるが、後者を選択して実行するには、従来からの薄利多売の規模を追う事業から脱却しなければならない。そうでなければ、例えば、社員が発明した画期的な技術でも、従来通りの“無難な安売り路線”と“小さな器”に乗せてしまい、労働生産性の低いままの事業を踏襲し続けることとなる。このような企業経営者は、マネジメント・イノベーション・パワー(経営革新力)を欠き、今後の経済社会では通用せず、最終的には企業を破滅させる。

現代の企業経営者は、特に交渉力を必要とする。事業には、外部との取引が伴うものが多いが、日常行われている取引はともかく、新たな大型の取引では、企業経営者がその交渉で先頭を切って臨機応変の対応をして、重要点をしっかりと纏め上げる必要がある。その基礎には正確な情報がなければならない。その情報の中でも、契約に関する知識が欠かせない。契約に関する知識がないと、相手のペースに巻き込まれて、とんでもない条件を飲むことになる。結果としてその取引を包含する事業は失敗する。即ち低収益事業で、労働生産性の低い事業となるか、赤字事業になるわけだ。契約に関する知識と言っても、法的部分は弁護士に任せてもよいが、取引や事業の内容を決する諸条件は、企業経営者(及びそのブレイン)が考えたものでなければならない。弁護士は、事業活動の専門家ではないので、契約の重要部である取引条件やそれから発生する危険性の判断、予想される危険の回避策まで考えることは不可能なのである。

これらを見ても、これからの企業経営者は、後ろにいて「突撃!!」と命令すればよいのではなく、危険が大きければ大きいほど、先陣を切って「俺に続け!!」と言わねばならないのだ。(物部一二三)

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(第18回)
「研究開発委託の具体的な進め方」
比較的簡単な技術の研究開発委託は、契約書において、
イ.研究開発の目的
ロ.委託範囲
ハ.(不確実性はあるが)取得すべき成果
について簡略に定めてしまうことも多いようです。しかしながら、より複雑な技術とか取得すべき成果について不確実性が高い場合、研究開発委託について詳細に定めます。例えば、次のような手法を用います。フェーズ1(基礎的研究)
1、第1段階
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
「受託者が研究済みのフェーズ0をベースとして、上記各事項に関して基礎的研究を行い、○○技術が△△について有効なものであることを確認する。」
2、第2段階
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
「この研究の段階においては、・・・・・・・・・・・・・ (上記第1段階の説明文と同様)・・・・・・・・・・・・・ を確認する。」
3、第3段階
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ に関する事項
「 ・・・・・・・・・・・(上記の説明文と同様)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ を確認し、第1段階および第2段階で得た成果とを総合し、◎◎◎への応用方針を設定する。」フェーズ2(応用技術の開発)
1、第1段階
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
「上記の各技術の開発は、単に理論的完成に止まらず、開発した技術が◎◎◎へ具現させることが可能となるまで ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
2、第2段階
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(上記の説明文と同様)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
3、第3段階
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発
○ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 技術の開発「上記各技術の開発は、◎◎◎を利用した□□□製品の製作のための理論的かつ実用的技術の完結と位置付けられ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」

フェーズ3(試作品の製作)
1、第1段階
「フェーズ0からフェーズ2までに研究開発した全技術を具現した□□□製品のプロトタイプを○○個製作し、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
2、第2段階
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(説明文)・・・・・・・・・・・・・・・・・・、受託者は大量生産のための開発を受託者と共に委託者の工場で研究開発を進め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」

上記は、研究開発委託(受託)の手法として1例を記載してみたに過ぎません。勿論、他の手法もありますが、研究開発の対象となる技術および商品として完成する製品の性質によって、その手法は異なります。

上記の例でもおわかり頂けると思いますが、研究開発の委託は、段階を追って進められ、各段階でも“各成果”が発生します。委託は途中で中断することもありますが、中断も予測される場合には、成果の帰属とか処分、委託料とか費用の分担および支払いなどが、より複雑になっていきます。日本国内の企業間の取引では、これらについて曖昧に進めても何とかなりますが、国際取引では、泥沼に入ってしまうことになりかねませんので、特にこの研究開発委託取引に関する問題点には注意を払わなければなりません。(つづく)

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「英米法における口頭証拠法則」

Q

外国の企業と契約書を一度締結すると、それ以前の合意した事項がすべて消滅することになるということを聴きましたが、それは本当でしょうか。その法的根拠は何なのかのご説明をお願いします。

A
英米契約法を考える上において忘れてはならないものとして、口頭証拠法則があります。口頭証拠法則は、契約が一度成立し、当事者の契約上の権利・義務の完全且つ最終的表現とする意図の下にそれが書面化された場合は、その書面契約の内容を争うために外的証拠を提出することは許されないというものです。それは書面契約の内容の確定性と最終性とを担保するものと言うことができますが、この法則自体は、書面作成の時およびそれ以前の合意のいわゆる口頭証拠を排除するためのものであるため、その後行われた書面契約の消滅変更の口頭による(verbal)合意を証明することを防ぐことはできません。即ち、書面契約は口頭の(verbal)合意で消滅変更ができるからです。しかも、原契約書中に消滅変更は書面に限る旨が明記してあっても、その後の口頭による(verbal)合意で消滅変更できることになり、そのため、口頭証拠法則の目的とする書面契約の確定性と最終性を著しく害することになってしまいます。この問題を妥当に解決するために、米国の数州では口頭証拠法則を補強徹底して、例えば、ニューヨーク州では、原契約書中に消滅変更について書面要件を規定しておけば、それに強制力を与えるとしています。口頭証拠法則の適用要件のうち最も重要なのは、当然ながら書面性であると言えます。書面上には、両当事者の権利・義務が完全且つ最終的表現として表示されている必要があるわけですが、それは一通の書面として現存している必要はなく、その合意に達するまでの往復書簡や電報でもよく、また同時に数通の書面が作成され、いずれも契約内容の完全且つ最終的表現の一部となる場合でもよいとされています。契約書作成前に同一事項について行われた交渉や合意は、たとえ書面化されていてもそれによって現在の契約書の内容を否認したり変更したりすることはできません。しかし、契約内容の完全且つ最終的表現と考えられ得る契約書が作成され、他方、これと異なるような内容の書面がその契約書作成時またはそれ以前に作成されており、その旨その契約書中で明記され、その書面が契約の一部を成すものとされている場合には、この限りではないと解されています。

当然のことですが、口頭証拠法則は、契約当事者間の問題に関してのみ適用されるのであって、対第三者に関しては論じられません。

b)口頭証拠法則と国際契約
国際契約といえども、基本的には国内契約と同一であることは当然ですが、それをめぐる環境の特殊性のゆえに様々な配慮が要求されます。この口頭証拠法則も、わが国の法体系上同様な法則がないだけに、国際契約締結の際は充分気をつけなければなりません。この法則は英米法特有のものだろうから、そのような法体系を有する国々との契約交渉に際しては、契約準拠法(その契約がいかなる国の法律のもとに成立し、解釈されるべきかを決定づける法規準のことと一応理解して頂きたい)を当事者の合意で英米法系の国の法律とする場合は勿論のこと、準拠法条項を設けなかった場合であっても、そのような国の法律の適用可能性が皆無とは言えませんので、この法則の意味については充分な理解が必要となるわけです。

契約自体は、本来二人以上の相対立する意思表示の合致によって成立するのが原則であり、その成立・履行の強制を証明・補強・担保するために書面性の要請が生じたものと考えられます。特に、今日のように複雑化した取引形態における当事者間の権利・義務を設定するためには、書面性は最大の条件です。まして、国際契約のように特殊な環境のもとに締結される契約においては、その重要性がクローズアップされます。この法則が適用される場合、即ち口頭証拠(契約内容の完全且つ最終的な表現たる書面以外のもの=外的証拠;extrinsic evidence)が排除されるための要件は、契約が書面でなされ、それが契約上の権利・義務の完全且つ最終的な表現とする意図のもとに作成されたという事実です。

国際取引契約書の作成にあたっては、その書面に網羅されている以外の権利は主張することができず、且つそれ以外の法律関係、事実関係は原則としてないものと考え、できる限り詳細で且つ明確な契約書を作成するよう心掛けなければなりません。日本流の、いわゆる腹芸は通用しないことが多く、問題が生じてから、「こんなはずではなかった」、「そういうつもりではなかった」では済まされません。契約書を作成したからには、原則としてそれがすべてであることを充分認識しておく必要があります。

なお、国際契約書中によく出てくるものとして、いわゆる「完全なる合意」(entire agreement)という条項があります。これはその契約書自体の地位を明確にするものであると言われています。即ち、契約交渉過程とか過去の合意条項などはすべて効力を失い、その契約書が当事者間の合意としては唯一のものである旨を宣言しているものです。この条項は、英米法上の口頭証拠法則を積極的且つ真正面からとらえている条項です。

以上、口頭証拠法則の国際契約における立場について述べてきましたが、この法則は現実の要請からさまざまな例外を生むに至り、この法則を確立させるに至った契約概念と、その中に脈々と流れている英米法系の契約理念については従来のような原則の厳格な適用はなくなったといえども、充分な配慮と認識とが要求されます。
(IBDコンサルタント)

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